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《リポート2025》茨城・取手市、移住政策が奏功 人口6年連続「社会増」 住宅安価、交通の良さ発信

取手市人口の社会増減推移
取手市人口の社会増減推移
特設サイト「ほどよく絶妙とりで」の生活費試算システム=取手市役所
特設サイト「ほどよく絶妙とりで」の生活費試算システム=取手市役所


茨城県取手市の人口が6年連続で転入が転出を上回る「社会増」になっている。近接する千葉県や東京都からの移動が要因の一つだ。市は首都圏の住民をターゲットにした移住政策に力を入れ、「生活費の安さ」「交通アクセス」を武器にプロモーションしている。ベッドタウンとして栄えてきた同市も、今は人口減少と高齢化が進む。市は子ども関連政策も強化し、子育て世代を呼び込む考えだ。

▽生活費試算

市の魅力発信サイト「ほどよく絶妙とりで」に11月末、「とりで生活費かんたんシミュレーション」というコンテンツが追加された。持ち家かマンションなど住居形態や世帯人数を選択した上で、市内での生活費を住宅費や食費、光熱水道費など計8項目で試算する。市は「取手の生活にリアリティーを持ってもらうため」と話す。

サイトでは東京へのアクセスの良さも加えた。JR常磐線で取手-上野間が「最短33分」とPRする。首都圏の人に向けて都心より安価な住宅や交通の良さをアピールする狙いがある。

市は2016年、都心との距離や自然環境など市の特徴を表したブランドメッセージ「ほどよく絶妙とりで」を掲げ、移住政策に本格的に乗り出した。子育て世代向けの補助金も新設し、結婚や住宅の支援を打ち出している。

▽コロナ禍契機

隣接する千葉県我孫子市から2年前に取手市に移った猪狩清徳さん(37)は妻と1歳の長男の3人で暮らす。

以前は都内に住んでいたが、コロナ禍でリモートワークが主となり、住宅費の安さを重視して取手で家を購入した。東京・新橋の広告系会社への出勤は現在週1、2回、常磐線の乗り換えなく約1時間で着く。猪狩さんは「東京と比べて家は広いし、安い。ゆとりある空間で心理的にもいい」と現在の生活に満足する。

総務省の住民基本台帳人口移動報告を基に、市が毎年10月1日現在の人口をまとめた統計によると、同市の人口移動(日本人)は17年までは転出超過だったが、18年からは転入超過に転じた。23年は363人増となり、6年連続で社会増となっている=グラフ。転入元では23年は上位10自治体のうち、千葉と東京の8市区が占める。

要因について、市内の不動産会社「幸和住宅販売」の関口和寿社長は「東京までの近さが再認識され、東京圏の住宅高騰も影響しているのでは。取手への転入増は今後も続くだろう」と分析する。

▽高齢化、人口減

市では高齢化が加速し、人口減も抱える。昭和40年代の高度経済成長期に首都圏のベッドタウンとして人口が急増し、当時定住した世代が高齢者となる時期になった。高齢化率は約35%(10月時点)で県平均31%を上回る。人口は05年の約11万3000人をピークに現在は約10万5000人に減り、市の財政にも影響を与えている。

市は子育て世代を呼び込みたい考えで、25年度には「こども部」を新設し、子ども関連政策に全庁的に取り組む姿勢だ。市幹部は「社会増を継続し、まちの新陳代謝を図ってリニューアルさせたい」と話す。



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