学生に働くヒント 県央地域で展開 交流・見学会 定住やUJターン後押し 茨城
茨城県にゆかりのある学生の定住やUJターン就職を促そうと、県央地域で自分らしく働くヒントを探るプログラム「さがす いばらき」が始動中だ。水戸市など9市町村でつくる「いばらき県央地域移住・定住促進協議会」が主催。学生を対象に、多彩な来歴を持つ社会人との交流会や街のにぎわい拠点の見学会などを実施している。同地域に転入した学生の定住、進学で転出した学生が帰郷し就職するUターン、転出した学生がふるさとに近い地方都市で働くJターンを後押しする。
昨年12月7日の同プログラムの催しには、茨城県出身の大学生3人が参加した。一行は、那珂市の映画館やひたちなか市の交流拠点などを訪問し、地元でさまざまな仕事に取り組み、創作活動などを続ける人たちの言葉に耳を傾けた。
■映画を軸に
「どのように映画を選んでいますか」。常磐大1年の菊池渓介さん(19)は、訪問した那珂市瓜連のミニシアター「あまや座」で、支配人の大内靖さんに問いかけた。「感動して終わりではなく、多様な意見が生まれそうなテーマを選ぶ」と大内さん。菊池さんはうなずいてメモを走らせた。
埼玉県出身の大内さんは東京都の映像会社を経て茨城県内に移住。2017年、閉店したスーパーの駐車場跡にあまや座を開設した。映画館を軸とした地域づくりをリードしようと、周辺の店舗マップの制作を手がけていることも紹介した。
続いて一行は、ひたちなか市那珂湊地区の空き家を改装した交流拠点「みなとのおへそ」を訪問。参加者は美術家の臼田那智さんの経験談に耳を傾けた。
臼田さんは地区の芸術祭で住民と創作活動をするうちに地域にほれ込み、17年に東京都から単身で移住したという。現在は芸術祭の裏方も務め「貯金ゼロ、無職の思い切った移住がいい方向に転じた」と振り返り、持ち前の大胆さで学生を驚かせた。
■決断に驚き
さらに参加者は東海村を訪れ、親子でゆっくり楽しめるマルシェを催す一般社団法人ラフェット・デラーブルの切敷明彦さんらの話を聞いた。
参加した菊池さんは「人生の転換点で軽やかに決断する人がいて驚いた。これから大切なことを決める時に背中を押してくれそう」と感心していた。
地元就職を考えつつも、魅力的な仕事は都内に限られるように考えていたという同大2年、黒沢香音さん(20)は「茨城でやりたい仕事をやっている人がいると分かった。地元のつながりを大切にし、茨城の良さを生かして仕事にしたい」と話し、得られた情報に満足そうな様子だった。
■多い転出者
取り組みの背景には、大学進学のために県外に転出する学生の多さがある。文部科学省の学校基本統計(22年度)によると、38道県で進学に伴う転出者が転入者を上回った。茨城県から転出した学生は8779人に上り、全国で2番目に多い。
同協議会は、茨城県での就職や暮らしを思い描ける情報が学生に不足していたと分析。昨年11月、同プログラムをスタートした。県内で自分らしく働く〝プレーヤー〟の生の声に触れられる機会を、学生らに提供していく。3月まで計11回実施する。協議会事務局を務める水戸市の担当者は「学生たちが茨城で働くことを選択肢に入れてくれれば」と期待を込めた。