漁仲間「帰してあげたい」 茨城・鹿島沖漁船転覆 不明3人 高い波、捜索阻む
大津漁協(茨城県北茨城市)の第八大浜丸が鹿島港沖で転覆し2人が死亡、3人が行方不明となった事故から一夜明けた7日午前、民間漁船6隻が同市の大津港から行方不明者を捜索するために現場の海域に向かった。だが、天候の悪化により、捜索を断念、約2時間後に同港に引き返した。漁仲間は行方不明者を「大津港に帰してあげたい」と話した。
6日の救助活動にも参加した第11不動丸漁労長の大熊和也さん(54)=同市=は「波が高くうねっていて危険なので仕方なく帰ってきた」と説明。「自然にはかなわないが、8日以降もできれば捜索に参加し、行方不明者を見つけたい」と肩を落とした。
事故当時、現場周辺で別の船に乗り漁をしていた50代男性によると、鹿島港沖にイワシが密集し、静岡県や宮城県など全国から漁船約20隻が集まっていた。第八大浜丸が転覆する直前、同船と周辺の船は網が互いに絡み合わないよう、無線でやりとりをしていたという。男性は第八大浜丸が無線で、周りの船との網と網の間隔を「300メートルにして短くしますから」と呼びかけていたのを聞いた。
男性は自身の経験から「(網に入った)イワシは水温が低くなればなるほど海底に向かって押す力が強くなる。今回はイワシが船の下に入って、船が傾いていったのではないか」と転覆の状況を推測した。
行方不明者について、男性は「どうしても大津港に帰してあげたい」と、悲しげに繰り返した。
■事故調査官現地入り 原因分析へ方法調整
運輸安全委員会の船舶事故調査官3人が7日午後、現地入りした。銚子海上保安部で救助状況を確認すると、銚子漁協に移動。沈没した第八大浜丸を所有する会社の社長や大津漁協幹部、事故に遭った船団の乗組員と、今後の調査の進め方について調整した。
調査官によると、北茨城市にある船主の会社などを訪ね、船の安全管理体制や事故原因の分析に必要な情報を集めることなどを決めたという。
井桁正樹船舶事故調査官は取材に対し、「巻き網漁で魚を囲い過ぎて転覆する事例は過去にないわけではない」とし、「乗組員らに丁寧に話を聞き、当時の状況を明らかにしたい」と話した。