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祭頭囃体験、25年春スタート 鹿島神宮、初の試み 観光誘客、担い手確保 茨城

祭頭囃で樫棒を組み鳴らす下幡木郷の囃人たち=2024年3月9日、鹿嶋市宮中
祭頭囃で樫棒を組み鳴らす下幡木郷の囃人たち=2024年3月9日、鹿嶋市宮中


鹿行地域に春の訪れを告げる鹿島神宮(茨城県鹿嶋市宮中、東俊二郎宮司)の祭頭祭を彩る祭頭囃(さいとうばやし)に、当番字以外の住民や観光客らも今春から参加できる仕組みを初めて取り入れる。当番字の囃人(はやしびと)たちと同様に、樫棒(かしぼう)を組み鳴らして参道を練り歩く体験ができる。奈良時代から続くともいわれる伝統行事の担い手不足の解消や、国内外からの観光需要を取り込むのが狙いだ。

祭頭囃は、当番字の住民が華やかな衣装をまとい、長さ約1.8メートルの樫棒を持って、太鼓の音に合わせて「イヤーホエ鹿島の豊竹トホヨトヤ」などと祭頭歌を歌いながら奉納する行事。2024年は26年ぶりに下幡木郷(同県神栖市)が担い、樫棒を「ガッシ、ガッシ」と組み鳴らす、一つ十数人の円陣が15組でき、豪快に披露された。

下幡木郷の祭事委員長を務めた額賀瑞穂さん(69)は「当番字を担うことで、1年間準備を重ね、地域の団結力が高まった。祭りの後、地域住民同士であいさつし合う光景が増えた」と振り返った。ただ半面、当番字以外の地域が盛り上がっていないことも実感したという。

当番字は同神宮を中心に66の郷を半分ずつに分けた南郷と北郷から、同神宮の卜定(ぼくてい)神事で一つずつ決めている。だが近年は、鹿島神宮によると受け入れ可能な郷の数は50を切り、本来は南北双方から出る当番字が、片方だけという年も珍しくない。理由として、本番(3月9日)までに年間を通じて多くの関連行事があることや寄付金集めが大変なこと、少子化で担うべき人材が少ないことなどが挙げられている。

これまでに祭頭囃保存会(田口伸一鹿嶋市長)が衣装準備などの負担軽減策や、3月9日が土日以外となった場合は神事以外の行事は直後の「土曜日」開催にすることで参加しやすい態勢を整えることなどを進めてきた。

今回はこれらに加え、当番字以外の住民や観光客らが伝統行事に参加することで、二十数年に1回巡って来る当番字の重圧の低減を図り、地域最大規模の祭りの観光需要を掘り起こすことを期待している。昨年12月上旬の同保存会の会議で提案され、試験的に導入することが決まった。

具体的には「満喫ツアー」と「飛び入り体験」を計画。ツアーは有料で、祭頭祭の歴史や見どころなどの解説を受けられるほか、法被を着て祭頭囃を体験でき、本殿での「正式参拝」もできる。飛び入りは、保存会のメンバーが観光客らに声をかけ、樫棒に触れてもらい、親しんでもらう。今後詳細を固めていく。

提案者の一人で、同保存会常任理事の木内政和さん(65)は「祭頭祭を後世に残すために提案した。関係者は誰もが危機感を持っている。鹿島神宮や当番字に迷惑がかからないよう、まずは試験的に始めたい。当番字受け入れのハードルが下がり、祭頭祭に関心を持つ人を増やしたい」と説明した。

★祭頭祭
鹿島神宮固有の祭礼で、秋の祭典・神幸祭(じんこうさい)と並び最大規模を誇る。祭頭祭、祭頭囃、次の当番字を決める春季祭に大別され、総称して祭頭祭と呼んでいる。「鹿島の祭頭祭」(祭頭囃保存会編)によると、五穀豊穣(ほうじょう)を祈る祈年祭で、秋の収穫を祝う「新嘗祭(にいなめさい)」と対をなす春祭としての性格が強い。同神宮は日の出を最初に迎える東の端にある神社であり、囃人による樫棒で大地の眠りを覚まし、豊かな春を呼び、鹿島地域だけでなく、日本全国の豊作と繁栄を祈る神事でもあるという。



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