《広角レンズ》水道水全国調査 PFAS検査、茨城県4割 「簡易」未実施目立つ
発がん性が指摘される有機フッ素化合物(PFAS)を巡り、政府が実施した水道水の全国調査で、茨城県内377水道事業のうち、検査を実施していたのは約4割に当たる151事業にとどまった。上水道は全て実施していた一方、給水人口が5000人以下の簡易水道などで未検査が目立つ。環境省は2026年4月からPFASを水道法上の「水質基準」の対象として定期検査を義務付ける方針で、県内でも対応を迫られそうだ。
つくば市上郷の簡易水道組合「道角水道組合」は昨年7月ごろ、PFASの代表物質「PFOS」と「PFOA」の水質検査を初めて実施した。結果は、測定できる値より低い定量下限値未満。「検査して良かった」。広瀬忠夫組合長(69)は胸をなで下ろす。
同組合は約60戸が加入する。保健所から全国調査(同5月下旬~9月下旬)の案内があり、不安を払拭(ふっしょく)するためにも検査を受けることにしたという。検査費用は原則事業者の負担。市の補助金を活用し、費用の一部に充てたという。広瀬組合長は「汚染されていたらと心配したが、安心した」と話す。
全国調査の対象となったのは、給水人口が5千人超の「上水道」をはじめ、水道事業者に浄水を供給する「水道用水供給」、社宅や療養所など特定の居住者・利用者らに給水する「専用水道」、101~5000人の「簡易水道」。2020~24年度の検査結果や検査状況を調べた。
国は暫定目標値として1リットル当たり50ナノグラム(ナノは10億分の1)とする。県内では筑西市内とつくば市内の専用水道の2事業で目標値を上回った。いずれも原因は不明で、健康被害は確認されていない。
検査状況については全ての上水道(42事業)と水道用水供給(3事業)、公営の簡易水道(8事業)で実施されていた一方、102事業ある非公営の簡易水道は2事業のみ、222事業ある専用水道は101事業にとどまった。
県水政課によると、非公営の簡易水道は住民自治組織が大半。主な未検査の理由に「検査費用が負担になる」(76事業)「水道法上の測定義務がない」(16事業)などが挙がった。
環境省は昨年12月、PFASを法的な義務付けがない暫定目標値から定期的な水質基準に格上げする方針を固めた。現在は、国の定めた基準値を超えても水質改善は努力義務にとどまるが、26年4月からは義務化される見通し。水道事業者は今後、対応を迫られる。
環境省などによると、検査は原則事業者の自己負担となる。水道法上の「水質基準」の対象に引き上げとなれば、簡易水道で原則3カ月に1回の検査が義務付けられる見通し。検査結果からその後検出される可能性が低い場合は、回数を減らすなどの負担軽減策も盛り込まれる見込みだ。
県の統計資料によると、22年度の給水人口269万6000人のうち、非公営簡易水道は1万8000人、専用水道は5000人。同課担当者は未検査の水道事業者らに対し「検査を呼びかけていく」としている。