筑波山地域ジオパーク改善 課題見直し、再認定へ審査 茨城
地質遺産の保全、活用に取り組む「ジオパーク」に認定されている、茨城県の「筑波山地域ジオパーク」再認定審査が27日に行われる。活動継続のために必要な手続きで、認定組織の日本ジオパーク委員会(JGC)が4年に1度審査する。関連6市でつくる推進協議会は再認定へ向けてこの4年間、課題の改善や活動の充実に努めてきた。
▽基準
同日は国内10地域の再認定審査が行われる。審査をクリアすれば再認定となり、4年前の認定時に指摘された課題の解決に対応していないと、2年間の条件付き再認定とされる。
筑波山ジオは同県内のつくば、石岡、笠間、桜川、土浦、かすみがうらの6市にまたがるエリアで構成。2016年9月に日本ジオパークに認定され、4年前の再認定の時、運営体制の在り方や部会員間の相互連携など課題8項目を指摘された。
この中で早急な対策を求められたのが、ジオサイト(地質資源場所)の見直しだった。これまでは「筑波山山頂」など地域ごとに26カ所を設定していたが、ユネスコ(国連教育科学文化機関)世界ジオパークの審査基準との整合性を考慮した見直しが必要となり、推進協で再検討に着手。
その結果、ジオサイトは名称を地質サイトと改めて22カ所を再選定。同時に、自然遺産8件、有形文化遺産32件、無形文化遺産8件、ビューポイント12カ所を選び、24年8月の総会で設定した。
事務局を担うつくば市ジオパーク室の伊藤祐二室長は「これまでのジオサイトは具体的な位置が不明瞭だったが、再選定では『筑波山山頂の斑れい岩』というように地点を明示し、保全対象を分かりやすくした」と解説する。
▽天然石
24年11月下旬にはJGCによる現地調査があり、調査員2人がつくば市や桜川市の見どころを視察し、サイトの見直し状況についてもヒアリングした。
事務局側も再認定へ向け、筑波山ジオが学べる「つくばジオミュージアム」の開設など、この4年間の成果を報告。筑波山塊の花崗(かこう)岩が24年7月、国際地質科学連合からヘリテージストーン(天然石材遺産)に認定されたことも大きな実績として紹介した。
ヘリテージストーンは国際的価値が高く、人類との関わりが古い天然石を認定する世界的なプログラム。筑波山塊の花崗岩は産地にちなんで真壁石(桜川市)、稲田石(笠間市)と呼ばれ、石材は国宝の迎賓館赤坂離宮や日本橋などの重要文化財などに使われている。東アジア地域からヘリテージストーンに認定されるのは初めてのことだ。
認定の申請を担当した事務局の杉原薫専門員は「良質な石材が国際的に認められ、価値を高めることができた。今後はジオパークの理念である持続可能という観点から、資源の利用について関係者と話し合っていきたい」と新たな連携強化に期待感を示す。
▽連携
8項目のうち、概ね2年以内に解決すべき課題の一つとして示された「学校教育との連携」も進んだ。
推進協で専門員を1人雇用し、教育プログラムを21年度から開発。構成自治体の教育委員会と連携し、小中高校での出前授業や現地学習会を開いてきた。実施件数は21年度13件、22年度38件、23年度40件と年々増え、ジオパークの普及啓発につなげている。
推進協ではその他の課題である「ジオツアーの定期開催」など、積み残しについても今後、着実に前進させていく方針だ。伊藤室長は「サイトの見直しに伴い、案内板のリニューアルやパンフレットの更新などにも早急に取り組む。審査結果を踏まえ、引き続き、筑波山地域ジオパークをより良いものにしていきたい」と話した。
★ジオパーク
学術的に貴重な地形・地質を備えた自然を登録し、地域の暮らしや文化、歴史の保全を図るエリア。国内版の「日本ジオパーク」は有識者でつくる日本ジオパーク委員会が認定し、2024年10月時点で47地域ある。そのうち10地域は特に貴重としてユネスコの世界ジオパークに認定されている。