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サメの卵 無菌で発育 茨城県大洗水族館と東大、専修大 感染防御 仕組み解析

トラザメ(アクアワールド県大洗水族館提供)
トラザメ(アクアワールド県大洗水族館提供)
トラザメの産卵直後の卵(アクアワールド県大洗水族館提供)
トラザメの産卵直後の卵(アクアワールド県大洗水族館提供)


アクアワールド茨城県大洗水族館(大洗町)と東京大・専修大の共同研究グループが、産卵後のトラザメの卵の中は約2カ月間、無菌に近い清潔な状態が維持されていることを発見した。研究結果は未知の生体防御メカニズムの存在を示し、解明により医療への応用や、絶滅の危機にあるサメやエイの保全に貢献するとして期待される。

共同研究は2023年度から約1年かけて行った。サメやエイなどの板鰓(ばんさい)類は産卵からふ化まで数カ月~1年ほどかかり、研究に携わった同館の徳永幸太郎副参事によると、この期間中の胚を海水中の病原性細菌から守る仕組みはこれまで不明だった。

多くの卵生種は、ふ化まで約3分の1の期間を過ぎると、海水環境に慣れるためコラーゲンでできた卵殻の一部が開き、卵殻内外を海水が自由に出入りするようになる「プレハッチ」という現象が起こる。

研究グループは、最初にプレハッチ前の初期胚を卵殻から取り出し、生存実験を実施。初期胚を天然海水で飼育したところ、20日後の生存率は0%だった一方、抗生物質を添加した海水では生存率100%だった。これにより、初期胚は免疫機能が未発達で、病原性細菌への感染に弱いことを確認した。

次に初期胚が置かれた卵殻内の特殊な微生物環境を調べるため、卵殻内の細菌数の計測や構造解析を行った。産卵直後の卵殻内は海水と比較して細菌数が極端に少なく、約2カ月間は無菌に近いクリーンな環境であることが分かった。

研究グループによると、板鰓類の卵は卵殻に包まれ、中は卵ゼリーで満たされている。鳥類の卵と似た要素で構成されるが、鳥類は卵白に抗菌タンパク質を含んで卵殻内を清潔に保つ一方、板鰓類の卵ゼリーにはタンパク質がほぼ含まれていない。

このことから、板鰓類には鳥類と異なる抗菌メカニズムが存在すると考えられ、今後、トラザメをモデルにした研究で、脊椎動物の新たな抗菌物質や、感染防御メカニズムの解明につながるとされる。

徳永副参事は今回の研究結果について、「希少なサメの繁殖成功率の向上や種の保全に貢献し、医療分野での応用にも可能性がある」と指摘する。

同館はこれまで27種のサメの繁殖に成功している。希少な種の保存を含め、「繁殖できれば展示するための魚類などを捕獲する頻度が減り、環境に負荷をかけない持続的な展示にもつながる」と期待する。



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