鉾田、PFAS目標値超 井戸4カ所、最大15倍 茨城
茨城県は14日、同県鉾田市内の鉾田川流域周辺の井戸4カ所で、有機フッ素化合物「PFAS」のうち、発がん性が指摘される代表物質「PFOA」「PFOS」の合算値が国の暫定目標値を超えた、と発表した。このうち1カ所は目標値の約15倍の770ナノグラムに上り、県内の地下水でこれまでの最大値となった。周辺住民は井戸水を飲用などに使ってきたが、現時点で健康被害は確認されていない。県環境対策課が同日、記者会見して明らかにした。
県や市は飲用を控えるよう呼びかけるとともに、物質の広がりの把握や原因究明を進める。
同課によると、2024年12月24日、県と市が同河川流域周辺7カ所の井戸水を同時に採取し、別々の機関に分析を依頼。それぞれ同じ4カ所で合算値が暫定目標値1リットル当たり50ナノグラムを超え、県と市の最大で徳宿地区の1カ所で15.4倍の770ナノグラムを検出した。
このほか、同地区の別の1カ所と大戸地区の1カ所で5.4倍の270ナノグラム、造谷地区の1カ所で2.8倍の140ナノグラムを検出した。
同河川では県が22、23両年度に実施した調査で、目標値の約1.4~2倍を検出している。これを受け、市が本年度、流域周辺の地下水を調べ、一部で目標値超過の疑いが判明。県と市が協力して飲用井戸を対象に調査を進め、14日までに確定値が出そろった。
目標値を超えた井戸4カ所の設置者に対して、速報値が出た7日の時点で水道への切り替えなどを指導した。
PFOAは水や油をはじく製品の加工や界面活性剤など、PFOSは泡消火薬剤や半導体製造など幅広く使われてきた。ともに現在は製造・輸入が原則禁止されている。上流部に使用していた工場や施設、不法投棄などがないか調査しているが、現時点で確認されておらず、原因は不明だ。
会見で同課の市村雄一課長は、原因究明などに向けた今後の対応について「物質の広がりを把握するため、周辺の井戸の水質調査を実施していく」と説明。環境省の手引に基づき、目標値を超過した井戸から約500メートル離れた位置にある飲用井戸を複数選定して行うという。
■原因究明、国へ要望 岸田市長
有機フッ素化合物「PFAS」のうち、発がん性が指摘される代表物質「PFOA」「PFOS」が茨城県鉾田市内の井戸4カ所で国の暫定目標値を超えて検出されたことを受け、同市の岸田一夫市長は14日、環境省を訪れ、国による原因究明などを求めた。市はさらなる水質調査を進め、検出区域の早急な絞り込みを進める方針だ。
市は同日から、職員が4カ所の井戸から半径500メートル内の対象地区に住む住民約250世帯を個別訪問し、井戸水を飲用しないよう注意を促すほか、PFASについて解説したチラシを配布している。対象地区のうち、造谷地区は上水道が未整備のため、井戸水の代わりに市販のペットボトルなどの飲用水を利用するよう呼びかけている。
市によると、市内の上水道普及率は昨年3月末現在で93.13%。ただ、上水道が利用できても「普段から井戸水を飲用する住民は少なくない」(市担当者)という。岸田市長は「市民の不安解消が重要。国の指導を仰ぎながら、県と連携して原因究明に努めていきたい」とコメントした。