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茨城県内の同胞 支え続け 水戸・越料理店主タンさん 1月帰国 「第二の母国、良い関係に」

茨城での思い出を振り返るレ・ヴァン・タンさん=水戸市白梅
茨城での思い出を振り返るレ・ヴァン・タンさん=水戸市白梅


茨城県内の外国籍として最多の1万9000人が暮らすベトナム人。在茨城ベトナム人協会やベトナム料理店を立ち上げ、多くの同胞を助けてきた同県水戸市のベトナム人男性が1月、家族の事情により帰国する。新型コロナウイルス感染症が拡大した時期はワクチン接種などの情報をベトナム語で発信し、職を失った同胞の相談に乗った。いつしか協会と店は、悩みを抱えるベトナム人の〝駆け込み寺〟となった。帰国を前に男性は「日本は第二の母国。いろんな人に支えられた」と謝意を示す。

■助け合う

男性はレ・ヴァン・タンさん(31)。持ち込まれる相談は、ごみ出しなどの身近な困りごとから、「『使えないから国に帰れ』と言われ、退職を迫られた」といった話までさまざまだ。タンさんは「助け合わないと日本で暮らしていけない」と話す。

「最新の技術を学びたい」と2012年に来日。日本語学校を経て、茨城大に入学し、卒業後に起業した。ベトナム料理店を開いたのは「県内のベトナム人に母国の味を安価で食べてほしかったから」と笑顔を見せる。19年末に知人と同協会を立ち上げた。主な活動は県内ベトナム人の交流会だったが、コロナ禍で一変した。

■コロナ禍

「仕事も住む家もなくなった」「基本給の6万円だけで、寮費は変わらず引かれる。暮らせない」-。新型コロナウイルス感染症の拡大とともに、悲痛な声が次々と伝えられた。

ベトナム人の中には日本語が不自由な人もおり、雇用を巡る会社とのトラブルで弱い立場に陥りやすかった。タンさんらは県内で活動する日本とベトナムの友好団体と連携して弁護士を店に招き、無料の法律相談会を何度も開いた。ビザの更新や就職先を探す手伝いもした。

未知の同感染症に対する同胞の不安は大きく、交流サイト(SNS)を通じ、感染状況やワクチン接種の情報をベトナム語で発信。保健所への連絡や病院で病状を伝えるのも助けた。

■願い

県内に住むベトナム人はこの10年で9倍に増え、外国人労働者としても最多となった。さまざまなトラブルをきっかけとして、警察に摘発されるベトナム人も増えた。

警察の取り調べに通訳として立ち会ってきたタンさんは「オーバーステイは不幸への道」と言い切る。日本に来るベトナム人の実習生の多くは地方出身。日本での生活や稼ぎを夢見て、親族らに数百万円の借金をして来日する。転職の自由はなく、パワハラやセクハラに遭っても、対応してくれない監理団体もあるという。仮に逃げ出して在留期間を過ぎれば、警察に追われる立場になる。

タンさんらは実習先の会社との交渉や監理団体の変更も手伝っている。「助けられたのはごく一部。オーバーステイになれば、もう助けられない」と話す。

同胞の悩みに寄り添う中で芽生えた願いがある。「いい人も悪い人もいるのは日本人と変わらない。外国人だからと差別せず同じ人間として見て、良い関係を築いてほしい」。帰国後もネットを通じて、県内ベトナム人の相談に応じるつもりだ。



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