キャンナス 地域で存在感 茨城県内3カ所に拠点 訪問看護の「隙間」支え
看護師らでつくる有償ボランティア団体「全国訪問ボランティアナースの会(キャンナス)」が全国で活動を広げている。茨城県内にも3カ所あり、現行の保険制度でカバーしきれない支援の「隙間」に手を差し伸べる。介助や介護の必要がある高齢者や障害者だけでなく、家族の負担軽減にもつながり、地域社会で存在感を高めている。
■細かなニーズ
「さっぱりした! よかったね」。身体、精神障害があり入浴が難しい高齢男性の年に1度の散髪。同行し、明るく声をかけるのはキャンナス水戸を立ち上げた佐野理恵さん(45)だ。
佐野さんは訪問看護事業所も運営し、買い物、通院の付き添いや送迎など、制度内で賄いきれない利用者からの細かなニーズに対応している。先の男性も利用者の1人。この日は朝の訪問看護を終えた後、理容店までの送迎と店内での見守り、会計を手助けした。
医療保険や介護保険制度を利用した訪問看護は1回最大90分。回数に上限があり「どうしてもカバーしきれない困り事が必ず出てくる」という。そこを訪問看護とキャンナスを組み合わせて利用してもらい、困り事をなくす。佐野さんは「安心して生活をしてもらえるし、十分な支援ができる」と説明する。
■無理をせずに
キャンナスは利用者を支えるだけでなく、同時に利用者の家族も支える。
キャンナス潮来代表の堀内真弓さん(46)は、ケアマネジャーとして介護施設に勤務しながら、活動を続ける。対象は1人暮らしの高齢者が中心。遠方に住む家族の代わりに、依頼に応じて朝の支度や送迎をしたり、仕事中の夫の代わりに認知症の妻の見守りや家事をしたりする。
制度上支援が必要ないとされる部分にも、支えが必要なことは多い。その制度の「隙間」の大半を実際に埋めているのは家族だ。堀内さんは「家族にも生活があり、無理をすると支える側も疲れてしまう。看護師がそばにいることは家族も楽になり、安心にもつながる」と話した。
■最後のとりで
堀内さんによると、どこに相談をしても支援を受けられず、すがる思いでキャンナスに相談をしてきた人もいるという。「助けが必要な人にとって、最後のとりでのような存在。できる限り手を差し伸べ、喜んでもらえることが活動の原動力になる」と語った。
一方、キャンナス日立代表の佐藤絢美さん(40)によると、悩む人が助けを求めて踏み出すハードルが高い現状もある。「田舎だと多少大変でも自分でやらないといけないと思っている人は多い。頼る選択肢があると知ってもらうことが今は大事」と話した。
全国では計174カ所のキャンナスが立ち上がり、活動は広がる。キャンナス本部の菅原由美代表は「制度が拡充し、支援の隙間がなくなることが理想」とした上で、キャンナスの活動が「地域で困っている人を支え合えるまちづくりのきっかけになれたら」と話した。