茨城・日立6人殺害 上告審結審 弁護側、死刑回避訴え
茨城県日立市田尻町の県営アパートで2017年10月、妻子6人を殺害し建物に火を付けたとして、殺人や非現住建造物等放火などの罪に問われ、一、二審で死刑判決を受けた無職、土肥(旧姓小松)博文被告(40)の上告審弁論が20日、最高裁第2小法廷(草野耕一裁判長)であり、結審した。判決期日は後日指定される。
弁護側は、土肥被告は起訴後に心不全となり、その後遺症で事件当時の記憶を失っていることから、「訴訟能力が認められない」として法令違反のため公訴棄却すべきだと主張。時間をかけて記憶が戻るのか審理するよう求めた。さらに「ずさんな裁判で死刑にすることが決してあってはならない」とし、慎重な手続きや証拠の再検討を求めた。
検察側は上告の棄却を求めた。一審は記憶の回復について検証した上で手続きをしていたと反論し、犯行により6人が死亡したことや、順次殺害を繰り返した態様から「死刑選択は正当」と改めて主張した。遺族の処罰感情について、一様に極刑を望んでいるとも述べた。
21年の一審水戸地裁判決は「意思疎通を図ることは十分可能であり、訴訟能力があることは明らか」とし、結果の重大性や悪質性を踏まえて死刑にすべきだと判断。23年の二審東京高裁判決も支持した。
判決などによると、被告は17年10月6日午前4時40分ごろ、自宅和室で、妻の恵さん=当時(33)=のほか、当時11~3歳の子ども5人を包丁で刺した後、玄関付近にガソリンをまいて放火し、殺害した。
最高裁は二審が死刑の場合、弁論を行うのが慣例となっている。