鳥インフル、迅速判定 10日を最短1日に 国環研発ベンチャー 茨城
国立環境研究所(国環研、茨城県つくば市小野川)発のベンチャー企業「野生動物医科学ラボラトリー」が今月から事業をスタートした。野鳥の鳥インフルエンザのウイルス検出を効率的に行い、感染の有無を速やかに判定する。国環研が蓄積してきた技術を活用し、従来なら10日間必要だった判定期間を、1~3日間に短縮した。国環研の生物多様性領域室長で、同社代表の大沼学さん(58)は「感染症の不安を払拭できるよう、事業を展開したい」と意気込む。
同社は昨年10月、国環研発のベンチャー企業第1号として設立。1月6日から事業を開始した。野鳥のほか、ペットなどの鳥に対しても、高病原性鳥インフルエンザの検査体制を確立させる狙いがある。鳥インフルエンザの判定のほか、絶滅危惧種の保全活動を支援する技術開発や野生動物の病気の検査なども担う。
従来の判定方法は、野鳥からサンプルの検体を採取し、鶏卵でウイルスを増殖させる。高病原性鳥インフルエンザと判定するには10日間が必要だった。
同社は判定日数を大幅に短縮するため、ウイルスの遺伝子配列をピンポイントで増やす新技術を活用。さらに酵素を使いウイルスの遺伝子を効率的に増やす技術を用いて、3日間でより詳しくウイルスの型まで判定できるようになった。
高病原性鳥インフルエンザは近年、鳥類のほか、乳牛やキツネなど哺乳類にも広がりをみせている。同社によると、北海道でキツネやタヌキから検出されたほか、海外では昨年、米国で高病原性鳥インフルエンザにかかった乳牛から飼育員への感染も明らかになった。
大沼代表は「人への感染リスクも高まっている。いろんな野生動物へ検査の必要性がある」と、警鐘を鳴らす。今後は「(国内だけでなく)近国である東南アジアの検査体制にも貢献していきたい」と語った。検査料金は1検体で約3万円(上限)。依頼は同社ホームページを通じ、全国各地から受け付けている。
環境省によると、本年度の冬季をはさむシーズンで、茨城県での野生の高病原性鳥インフルエンザの発生は確認されていない(20日現在)。