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《リポート2025》「松風中」校名どうなる 日立・再考求め直接請求 選定過程疑問視 条例改正案、議会判断へ 茨城

条例改正を求める直接請求に向けて行われた署名活動=昨年10月28日、日立市久慈町
条例改正を求める直接請求に向けて行われた署名活動=昨年10月28日、日立市久慈町


茨城県日立市の市立坂本中と久慈中を統合して今春開校する「松風中学校」が、校名問題で揺れている。地元住民らが「校名決定の過程が不透明で、地域の意見が反映されなかった」と反発。再考を求め、市に条例改正の直接請求を行う事態に発展している。

「5403筆の署名が集まった。非常に重い責任が生まれると思う」

今月10日。住民グループ「松風中学校名の削除を求める会」は、小川春樹市長に対し、新校名を松風中と定めた条例の改正を求めて直接請求した。「久慈中」の存続を求めており、共同代表の鴨志田征央さんと三代喜良さんらが市役所で署名簿を提出した。

署名集めは昨年10~11月に実施。代表2人は統合に向けた協議の進め方に疑問を呈し「最終的に校名が決まるまで住民には経過が全く知らされなかった。もっとオープンに住民の意見を聞いてほしかった」と地元の声を代弁した。

直接請求は地方自治法に基づく制度で、同市では31年ぶり。市長は今月30日までに市議会を招集し、住民から出された条例改正案に意見を付けて提案する。

▽再編計画

両校の統合は少子化に伴う学校再編計画の一環。松風中は、学区の中心にある久慈中の校舎を使って4月に開校する。

市は再編計画を進める上で、規模にかかわらず「対等な統合」を前提とし、校名などは学校や地域の代表らでつくる統合準備委員会で協議して決めることにしている。

松風中では、準備委が生徒や保護者、地域住民から校名案を募集し、応募のあった196案の中から最初に10案を選定。その後は22人いる委員の投票で「松風」「日立南」「浜風学園」の3案に絞り、再度の投票で過半数の支持があった松風に決めた。

地名に由来しない松風とした理由には、統合2校の校歌で「松」と「風」が歌われ「この地域に昔あった松林と、海風が合わさった情景を校名として残したい」との思いが込められているという。校名を定めた条例案は昨年3月の市議会で可決された。

▽情報提供

だが、決定後間もなく地元では異論が広がり、再考を求める陳情や要望書の提出が相次ぐ。

住民側は選定過程に透明性や公正性を欠くと主張しており、募集では多くの住民が「久慈中」と書いたと主張。学校側から生徒や保護者に対し、既存校名を避けた名称での応募を求めるような呼びかけがあった点も指摘する。

これに対し市教委は「応募数の多い案を必ずしも選定するのではなく、あくまで参考」として集計結果は明らかにしていない。学校側の呼びかけについても、一部誤解を招く表現だったとして後日内容を修正したという。

一方、準備委で協議中の内容は「委員の自由な発言と活発な議論を展開するため」(市教委)として校名決定まで周知されず、住民側は情報提供の在り方も問題視。このため市教委は「今後は広報の在り方をさらに工夫していく」としている。

条例改正案を審議する臨時市議会を前に、住民側は今後も市内各地で学校の統合が控えていることから「今回の例を教訓に『地域と共にある学校づくり』を進めてほしい」と訴えている。



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