児童相談所 AIで強化 茨城県、虐待判断迅速に
茨城県は人工知能(AI)を活用し、児童相談所の対応力を強化する。相談中の会話から即座に適切な支援情報を判断し提供するほか、相談内容を要約した資料を自動作成し情報共有するシステムを構築、来年度からの段階的な導入を目指す。児相による虐待への対応件数が11年連続で増える中、経験が少ない職員でも迅速で的確に対応できる仕組みを整え、相談体制の質向上につなげる。
新システムは相談中の「虐待」や「無視」などのキーワードから、AIが判断した適切な支援情報を画面上に表示、リアルタイムで相談者へ提供できる体制を整備。職員が相談者から聞き取る確認項目についても、内容から即座に判断して一覧として示し、経験が少なくても的確に対応できる体制を実現する。
相談を受け付けた際の会話内容は自動でテキスト化する。対応した職員が相談後にまとめていた内容の要約資料はAIが行い、作業を効率化。児相内での情報共有を円滑にする。
2024年8~10月には県中央児童相談所(同県水戸市)で、新システムを使った実証実験を実施。実証後のアンケートで要約作業や支援情報の表示機能などに関し、ほぼ全ての職員が「役に立った」と回答したことから、「相談業務への有効性を確認できた」(県情報システム課)として、来年度から県内各児相への段階的な導入を検討していく。
このほか、児相が児童を一時保護する際、民間福祉施設の空き状況を確認できるアプリを開発し、本年度中の導入を目指す。これまで電話で行ってきた各施設への受け入れ可否確認を効率化し、受け入れ先決定を迅速化することで児童の負担軽減を図る。
県青少年家庭課によると、23年度の児童虐待に対する保護者指導や一時保護などの対応件数は4134件で前年比2.5%増。13年度から11年連続で過去最多を更新している。同課は「社会的に虐待防止に対する関心が高まり、通報や相談が増えていることが主な要因」と分析する。
相談を受け付ける職員の対応力の底上げは急務で、県情報システム課は「AIを活用することで相談の質向上を図り、職員による迅速で的確な対応を実現する」と話す。将来的にはシステムの機能を応用し、保健所や県税事務所などさまざまな施設への展開も見据える。