高萩市 返礼品充実に力 ふるさと納税 鉄道体験やアウトドア 寄付拡大目指し対策 茨城
茨城県内44市町村のうち、ふるさと納税寄付額ワーストとなっている高萩市は、寄付の拡大に向けて奔走している。JR高萩駅の特徴を生かした鉄道体験ツアーなどユニークな返礼品のアイデアを打ち出したり、副市長をトップとするプロジェクトチーム(PT)を立ち上げたりするなど対策を強化。市は寄付額年間1億円を目標に掲げ、「最下位なので、後は上がるだけ」と巻き返しを誓う。
■思い合致
市企画財政課によると、2022年度のふるさと納税寄付額は2171万円で県内市町村でワースト2位。23年度は台風13号に伴う大雨被害支援の寄付もあり、寄付額は約2800万円と増加した。しかし同年度は他自治体も寄付額を伸ばし、高萩市は最下位に転落した。状況を打開しようと、同市ならではの施設や自然を生かした体験型の返礼品の充実に注力する。
24年5月、留置線があるJR常磐線高萩駅の特徴を生かし、訓練体験会をJR東日本水戸支社と共に実施。資源を活用したい市と、地域の魅力を発信したい同社の思いが合致し、実現した。鉄道ファンを主なターゲットとして、線路点検で使用する「レールスター」の運転や列車の進行方向を切り替える転轍機(てんてつき)の操作など、希少な体験の機会を返礼品として提供した。
同課によると、寄付は7万円で、東京や大阪府などから計5人が体験会に参加した。同課の担当者は「まさに、ここでしか体験できない。今後も連携してイベントをやっていきたい」と手応えを口にする。
このほか、同市が整備を進めてきたアウトドア体験エリア「はぎビレッジ」内の施設利用チケット、サウナ・宿泊施設「コアミガメ」のクーポン券なども用意している。
■現地決済型
手持ちのスマートフォンなどを使い、その場で納税できる現地決済型も導入した。昨年末から一部のゴルフ場や宿泊施設などで利用できる。プレー代や宿泊代などに利用することができるという。同課の担当者は「実際に高萩市に来てもらい、魅力を知ってもらえる。さらに興味を持ってもらえれば、次の寄付につながる」と利点を強調する。
このほか、同市で捕獲されたイノシシ肉などを提供する「茨城クラフトミート工房」や、さまざま風味がする食用花を育てる「柴田農園」などと連携し、返礼品を新規開拓。昨年度から既に26品目を増やした。
■動画やカード
「最下位の現実を重く受け止めなければならない」。同年11月、鈴木真人副市長はふるさと納税PTを立ち上げた。メンバーは座長の副市長を含め6人で、20~30代の若手や女性を起用した。会議を2週間に1回開き、先進事例の研究などを行っている。
即効策として、メンバーの一人が返礼品の写真をつなげた短編動画を制作。さらに、より訴求性のある調理や体験している様子を撮影した動画も作成した。今月上旬から、ネットを通し市外へアピールしている。また、人気を集めるマンホールカードに着目。シティープロモーションの一環として、返礼品の写真と納税サイトのQRコードが掲載された名刺サイズのカード配布も始めた。
鈴木副市長は「今年度は即効性のあるものが中心」と強調した上で、今後の課題として企業への働きかけや広報・PR法を挙げ「若手女性目線で自由に考えてほしい」と要望。「勝負は次年度以降」と巻き返しへ力を込めた。