《広角レンズ》「干し芋=茨城」確立へ 生産適地拡大に危機感 茨城県、PRに力
「ほしいも王国」を目指し、茨城県が県産干し芋の知名度向上に全力を挙げている。ブランド基準を設け、サブスクリプション(定額利用)や県内外フェア、新商品販売など多様な手法でプロモーションを展開。背景には、産地としての認知度の低さと新たな産地の台頭がある。県は「干し芋と言えば茨城」のイメージを確立させ、将来にわたる生産者の所得向上を目指す。
■ポテンシャル
県が2023年度に制定した1月10日の「ほしいもの日」に合わせ、東京・千代田区の有楽町駅前広場で9~11日、県主催の干し芋イベントが開かれた。
販売を通じて茨城県の干し芋の魅力をPRするのが目的。物販ブースには品種、形状、味の異なる約100種類の商品が並び、会場に「干し芋ファン」が押し寄せた。
「1日平均で200万~300万円は売れた」。県プロモーションチームの菊池克実チームリーダーは「干し芋にはポテンシャルがある。仕掛け方次第で売れる」と成果を強調。都内の消費者に「茨城県産の良さを広められた」と手応えを語った。
■伸び悩む知名度
県産地振興課によると、茨城県では20年、生産者553人が8834トンの干し芋を生産。23年の干し芋産出額は99億円で、全国シェアの99%を占める。
だが県が全国の消費者1000人を対象に実施した24年のインターネット調査で、茨城県を干し芋産地と回答したのは約3割。好きなサツマイモ菓子の順位でも、干し芋は5番目に低迷した。
認知度向上が課題となる中、北日本や北海道でも近年、サツマイモの生産が始まった。温暖化により栽培に不向きだった寒冷地が適地となりつつあるからだ。
「北海道は良い農産物とのイメージが強い。干し芋生産が本格化する前に、茨城県産を確固たる地位にしなければ」と同課の担当者は危機感を募らせる。
■全体の質を向上
県は23年度、干し芋のトップブランド化に着手。糖度65%以上、水分率20%などの基準9項目を制定し、全て満たした干し芋を「ほしいも王国いばらきプレミアム」に認定し、主に都内で販売を通じたPRを始めた。
本年度はさらにプロモーションを強化する。定額課金サービス「ほしいもサブスク」では品種や形状、味わいが異なる干し芋が自宅に毎月届く。購入者が自分の好みとともに、茨城県産の干し芋の多様さを見つけることを狙った。
ひたちなかや大洗地域のご当地グルメとして開発した「ほしいもシェイク」を販売するフェアを、同地域や県内外32店舗で2月末まで実施。干し芋産地の魅力を発信する。
10日に初めて開催した「全国ほしいもグランプリ」では、茨城県の生産者が1~3位を独占した。県産地振興課の担当者は「生産者の意欲を高め、産地全体の品質向上につなげたい」、大井川和彦知事は「干し芋人気を確実なものにし、業界全体の質を上げて、世界の干し芋産地を目指す」と、それぞれ期待感を示した。