時代超え力強く発信 キース・ヘリング展開幕 活動10年たどる150点 茨城県近代美術館
1980年代のアメリカを代表するアーティスト、キース・ヘリングの展覧会「キース・ヘリング展 アートをストリートへ」が1日、茨城県水戸市千波町の県近代美術館で開幕した。ヘリングは、シンプルな線と色で描かれた人間をモチーフにした作品などを手がけた。地下鉄駅構内で制作された初期作品から晩年の大型作品までを一堂に集め、時代を超えて力強いメッセージを発し続けるヘリングの魅力を伝える。
ヘリングは58年、アメリカ東部ペンシルベニア州の生まれ。80年代初頭、ニューヨークの地下鉄の使われていない広告板に絵を描く、通称「サブウェイ・ドローイング」で一躍話題となった。
「アートはみんなのために」という信念の下、美術館やギャラリーといった既存の展示空間の枠を超えて活動を展開。社会問題をテーマにしたポスターや壁画などのパブリックアート、子どもたちのための「赤と青の物語」などさまざまな作品を通して、アートを大衆へと発信していった。90年、エイズによる合併症で31歳で死去した。
同展では、山梨県の中村キース・ヘリング美術館の所蔵品を中心とする約150点を展示し、ヘリングの約10年にわたるアーティスト活動をたどることができる。
見どころの一つは、黒い紙に白いチョークで描かれた「サブウェイ・ドローイング」。今回、アメリカのコレクターが持つ5点が日本初公開だ。
ほかに、幅6メートルに及ぶ大作「『スウィート・サタデー・ナイト』のための舞台セット」や、ヘリングの代表的なモチーフ「ラディアント・ベイビー」を含む5枚組の作品「イコンズ」などが並ぶ。性的マイノリティーへの偏見、アパルトヘイト(人種隔離)、核兵器といった社会問題を訴える作品は、今なお社会へ鮮烈なメッセージを送り続けている。
県近代美術館学芸員の乾健一さんは「ヘリングの作品を一望できる貴重な機会。自分のお気に入りの作品を探してみてほしい」と来場を呼びかけている。
会期は4月6日まで。月曜休館。午前9時半から午後5時。