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「宇宙葬」もっと身近に 茨城・つくばのベンチャー、米国で打ち上げ、2回成功

スペースX本社を訪れたスペースNTKの葛西智子社長=米国テキサス州(スペースNTK提供)
スペースX本社を訪れたスペースNTKの葛西智子社長=米国テキサス州(スペースNTK提供)
遺骨を納めた人などの名前が刻印された専用ボックス(スペースNTK提供)
遺骨を納めた人などの名前が刻印された専用ボックス(スペースNTK提供)


茨城県つくば市のベンチャー企業「スペースNTK」が、遺骨を宇宙へ散骨する「宇宙葬」を身近なものにしようとしている。遺骨を人工衛星に収め、ロケットで宇宙へ打ち上げるビジネスを展開し、現在までに2回成功した。来年春に3回目を予定している。事業の定着を目指す葛西智子社長(64)は、「樹木葬や海洋散骨などの一つと捉えてほしい」と話している。

同社が掲げる宇宙葬は、米国の宇宙企業スペースXのロケットに遺骨などを入れた人工衛星を装着し、一緒に宇宙に打ち上げる仕組み。ロケット利用に関する契約を同社と結んだことで実現した。

遺骨を納めた人工衛星は宇宙に上げられた後、地球の軌道を周回し、最後は大気圏に突入して燃え尽きる。周回する期間は、打ち上げるロケットのミッションによって異なるという。

■2022年に初回

宇宙へ送ることができるのは、人やペットの遺骨のほか▽髪の毛(DNA)▽メッセージカード▽写真▽絵▽歯▽メッセージやモールス信号などのデータ。価格は、人の遺骨は少量(粉状でスプーン約1杯分から)が税込み55万~110万円、1体分が同770万円から。髪の毛やメッセージカードは同5万5000円から。収める箱には、遺骨を納めた人らの名前を刻印する。

同社とスペースXは、2018年の世界各国の宇宙ビジネス関係者が集まる「国際宇宙開発会議」への参加を契機に関係を深めた。葛西社長が同社日本人エンジニアと知り合ったことで契約が進み、22年4月に最初の宇宙葬に成功した。

24年12月には2回目の打ち上げを無事に完了。日本人16人分とペット1体の遺骨などを宇宙に送った。3回目として予定されている26年春の宇宙葬は、今年9月末まで申し込みを受け付けている。

■五分五分に

宇宙企業と直接交渉し、自社開発の人工衛生「MAGOKORO号」を使う点が独自の取り組み。宇宙散骨の国内でのサービス提供はこれまで、米企業の代理店などが行っていた。

葛西社長は葬儀会社で働いた後、独立し葬儀を企画立案する葬儀プランナーとして活動。17年にスペースNTKを設立し、宇宙葬の実現を目指してきた。

普及への課題は費用と認知度。最初の宇宙葬ではスペースXへの支払いが約1億5000万円かかり、赤字となった。2回目は、遺骨を入れる箱の容量を小さくするなど工夫して出費を抑え、収支はほぼ五分五分になったという。葛西社長は「亡くなった人の思いだけでなく、残された人の思いも届く宇宙葬にしたい」と展望を語った。



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