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点字学べば世界広がる 高齢化も「求められる限り」 土浦の点訳ボランティア 茨城

点字器で丁寧に打ち込む土浦市のボランティア団体「ひまわりの会」のメンバーら=土浦市大和町
点字器で丁寧に打ち込む土浦市のボランティア団体「ひまわりの会」のメンバーら=土浦市大和町


世界で初めて点字が考案されてから今年で200年を迎える。点字の普及と拡大に向けた活動が進む一方、広報誌などの点字化に取り組むボランティアは高齢化が進む。点字の読み書きは難しいため、普及こそ進んだものの使用率が低くとどまっている背景もある。それでも利用者は「点字を学べば、世界が広がる」と変わらぬ有用性を指摘。ボランティアは「必要とする人がいる限り活動を続けたい」と決意を新たにしている。

■仏で創始

点字は縦3点、横2点の六つの点を組み合わせて仮名や数字などを表現する。全盲のフランス人、ルイ・ブライユ(1809~52年)が1825年、世界で初めて点字を考案。日本語点字は教育者の石川倉次(1859~1944年)が考案し、1890年11月から使われている。

茨城県土浦市内で昨年12月末、点字体験が開かれた。同市で活動する点訳ボランティア団体「ひまわりの会」の会員が講師を担った。体験会は点字に慣れ親しみ、ボランティア活動を知ってもらおうと企画。点字を書くための道具として、点字器と点筆を用いる。参加者は点字の一覧表を参考にながら、これらの道具を用いて、紙を穴に押し込むように文字を打った。

初めて体験した同県牛久市立中根小5年の酒井瞭汰さん(11)は「点筆をきれいに押し込むのが難しいけれど、慣れてきたら楽しい。名前だったら読めるかも」と笑顔で話した。

■大臣表彰も

同会は1987年5月に発足。市の広報誌、かすみがうらマラソン兼ブラインドマラソンの記録証などの点訳、県立点字図書館からの依頼で点字図書の制作を行っている。本年度は障害者の生涯学習支援活動で文部科学大臣表彰を受けた。

会員は多い時は約40人いたが高齢化が進み、現在は24人。市内の視覚障害者向けに、年賀状や選挙立候補者名簿の制作などを手がけている。会員の作業はパソコン点訳が主流で、紙の種類により点字器や点字タイプライターを使う。

高校教員を定年後、同会に加入した小林邦夫さん(92)は「視覚障害のある方や子どもを助けたい思いがあった」と振り返る。長嶋恵代表は「会員は高齢化し人数も減っている。それでも点字を必要としている方がいる限り活動を続けたい」と意気込む。

■利用者1割

県障害福祉課によると、昨年3月31日現在、県内の身体障害者手帳交付者8万8697人のうち、視覚障害を主な理由とする身体障害者手帳の交付者は5632人で全体の6.3%だった。

県視覚障害者協会の軍司有通理事長は、県内の視覚障害者の中でも点字利用者は1割にも満たないと推測する。軍司理事長は「特に病気やけがで途中失明した場合、点字を学ぶことはハードルが高いと感じてしまうが、点字は世界を広げる」と強調する。

軍司理事長は41歳の時に病気で失明。会社の同僚から点字を学ぶ機会があり、30年以上利用している。

近年は人工知能(AI)を活用した文字の音声読み上げなどにより、点字以外の手段でも読み書きができるようになった。

だが、軍司理事長は「公共施設などの音声案内は、周りの音で聞き取りづらいことがある。商品を購入する時は点字がなければ品目が分からないなど、音声やAIだけでは担えない部分もある」と指摘。「点字教育を抜本的に改革し、点字を学ぶハードルを少しでも改善していかなければならない」と語った。



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