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《茨城・ろっこう体験》潮来・あやめ笠作り

苦戦しながらイグサを編む記者=潮来市辻
苦戦しながらイグサを編む記者=潮来市辻


■イグサ編み 四苦八苦 仕上げに風鈴、熟練技感服

イグサを編んで作る茨城県潮来市の伝統工芸品「あやめ笠(がさ)」。近年作り手が減少していることから、後継者の育成を目的に講習会が年2回開かれている。参加者募集の知らせを見て興味が湧き、体験してみることにした。

3日、体験場所の潮来市シルバー人材センター(同市辻)を訪れた。教えてくれるのは、同センターであやめ笠作りを担っている高橋トシ子さんら70~80代の女性6人。参加者は9人で、1人ずつ自己紹介をした後に早速作業が始まった。

挑戦したのは直径約15センチの風鈴付きあやめ笠。水郷潮来あやめまつりのシーズンには毎年200個以上売れる人気商品という。材料には熊本県産のイグサと、イグサと同じ色をしたビニールひも、針金などを使う。

まず、一つかみのイグサをひもで束ね、専用台に取り付ける。イグサを5、6本ずつ手に取り、2本のひもを交差させるようにして横に編んでいく。手本を見せてもらいながら基本の編み方をマスターし、「案外上手にできそうだな」と感じた。

■困り顔

ところが、ここからが大変だった。すかすかの笠になるのを防ぐため、イグサを足しながら編む必要があるという。手本を見ている時は簡単そうに感じるが、実際にやってみると全然うまくいかない。笠は一気に「ボサッ」とした見た目になった。笠のふちとなる部分に針金を通す作業にも苦戦した。

記者の編み方は力が入り過ぎていたようで、イグサは折れたり抜けたり…。三つ編みにする最終工程に入る頃には、本来よりもかなり短くなっていた。これには講師の女性も「あらあら、どうしましょう」と困り顔。手伝ってもらいながら、やっとのことで笠が完成した時はほっとした。

■4時間

仕上げでは南部鉄器の風鈴やプラスチック製のあやめ、赤い布の飾りを取り付けた。両手に乗るかわいらしいサイズで、手に取って揺らすと「リーン」と夏にぴったりな涼しい音色がする。所々いびつな形をしているが、眺めているとだんだん愛着が湧いてきた。

完成までにかかった時間は約4時間。では、講師の皆さんはどのくらい? あやめ笠作り歴約15年の高橋さんに尋ねてみると「6時間で4個」。改めて熟練の技に感服した。

■講習会

同センターはあやめ笠の作り手を増やそうと、2018年から市民対象の講習会を始めた。作り手は一時期3人まで減ったこともあったが、講習会で興味を持った人が加入し、現在は7人という。

あやめ笠作りは複雑な工程が多く、いったん作り手が途絶えてしまうと、再度養成するのは難しいように感じた。講習会などをきっかけに興味を持つ人が増え、作り手が増えてほしい。そして、伝統の技を次世代につないでいってほしい-。手元の風鈴笠を眺めながら、そう思った。

★あやめ笠
イグサで編んだ笠で、古くから農作業時の日よけや雨よけに重宝されてきた。軽くて風通しがよいのが特徴。大人がかぶれるサイズの大笠や飾り物として人気の風鈴付き笠などを潮来市シルバー人材センターの会員が制作しており、毎年初夏に開催される「水郷潮来あやめまつり」の会場で販売している。



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