雨情と能子 生涯に光 「七つの子」全員で合唱 水戸でコンサート 茨城
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茨城県北茨城市出身の童謡詩人、野口雨情の没後80周年記念コンサートが16日、同県水戸市千波町のザ・ヒロサワ・シティ会館で開かれた。今回、雨情と同郷で昭和初期に活躍した「伝説のソプラノ歌手」ベルトラメリ・能子(よしこ)(1903~73年)に光を当て、2人にゆかりのある歌やエピソードが披露された。来場者約1000人が熱心に耳を傾けた。野口雨情の心をうたいつぐ会(小田部卓会長)が主催した。
能子は東京音楽学校(東京芸術大)で声楽の基礎を学び、22年からイタリアに留学。同国の文豪、アントニオ・ベルトラメリと結婚した。夫の没後、31年に帰国してからはソプラノ歌手として各地で独唱会などを開いた。戦後は神奈川県鎌倉市に住み、都内の音大で後進の指導に当たるなど声楽の発展に貢献した。
この日は、雨情の孫で野口雨情資料館長の野口不二子さん(82)が作品の朗読や解説を担当。歌唱は、バリトンの高橋正典さん(46)、ソプラノの森田妃加允さん(36)=水戸市出身、ピアノ伴奏は松岡なぎささんが務めた。
公演の前半では、雨情に大きな影響を与えた恩師で小説家の坪内逍遙の手紙が映像で紹介された。「雨降りお月=雲の蔭」「捨てた葱」などの雨情作品を歌い上げた。後半では、能子と雨情の生涯が紹介されたほか、「オペラ『椿姫』より乾杯の歌」や「からたちの花」など、能子がリサイタルで演目とした歌が披露された。
不二子さんは「雨情は未来の象徴は子どもであり、童心は大人になっても持ち続ける必要があると指摘している。日本の美しい言葉、リズム、人間の優しさなど、雨情が言い続けた気持ちを伝えていきたい」と語った。最後には観客を含めた全員で、雨情の「七つの子」と「兎のダンス」を合唱した。
会場で耳を傾けた豊田稔北茨城市長は「雨情と能子は2人とも北茨城市で生まれ育った人であり、これからも大切に継承していきたい」と語った。