被災者情報連携 効果探る デジタル庁が実証実験 常総市民ら参加 茨城

防災アプリに登録する被災者情報のデータを、一つのシステムで連携させるデジタル庁の実証実験が16日、茨城県常総市鴻野山の石下総合体育館で行われた。市民ら44人が実験に参加。災害の通知などを行う五つの防災アプリを一つのシステムにつなげ、平常時や避難時などの段階に分けてシミュレートし、情報入力の効率化といった効果を検証した。参加者からは「手間が省けた」などと評価する声が上がった。
今回の実験では、災害の通知のほか、要配慮者の避難状況の登録、避難所の入退所手続きといった機能の異なる五つの防災アプリを連携。大雨による水害が発生したという想定で、アプリ間でデータ連携を行う場合と行わない場合の2通りの状況下で実験した。
参加者は家族世帯や要配慮者を支援するケア役などの役割に分かれ、平常時や避難時といった各段階別にしてそれぞれ情報入力やアプリ活用などを行った。
データ連携がない場合では、それぞれアプリ別に個人情報の入力が必要だった。一方でデータ連携がある場合では、一つのアプリで入力を行えば、マイナンバーカードによる本人認証とデータ連携の同意を経て、他のアプリにも情報が引き継がれるようになった。また、個人のアプリから入力された要配慮者の健康情報なども避難所運営側のシステムに共有された。
2015年の水害を経験し、実験に参加した同市の有田陽子さん(72)は「(データ連携で)入力の手間が省けたと感じた。個人の情報が共有される点もいいと思った」と感想を話した。
同庁は、災害時の適切な支援の提供や情報の多重入力解消などによる防災アプリの利用効率化を目指し、防災分野でのデータ連携基盤構築を進めている。大規模水害の経験がある常総市が実証実験に協力。被災経験者の意見をシステム構築に生かす狙いがある。
同庁国民向けサービスグループ防災班企画官の根本深さんは「実証実験で得られた成果を分析していきたい。目標として2026年度から本格的にデータ連携基盤の構築が進められるよう検討を深めていく」と話した。