障害者の外出支援 スマホ決済、家族が位置確認 つくば市で実証実験 茨城

茨城県つくば市や日立製作所などでつくる共同事業体が2月中旬まで、同市内で、知的障害や発達障害のある人が路線バスで目的地に行く実証実験を取り組んだ。1人での外出や現金の扱いが困難な人をスマートフォンを介して支援する仕組みで、料金を後払いする「ハンズフリーチケッティング」や見守りサービスの有用性を確認した。
実験は同市、日立製作所、筑波大、関東鉄道、今川商事などで構成する共同事業体が実施。同市内の筑波大付属病院内のフィットネスジムに通う障害者に最寄りのバス停とジム間を往復してもらい、被験者1人に対し2人のサポーターが付き添って安全を確保した。1月下旬から2月中旬まで行われた。
ハンズフリーチケッティングはビーコン(電波発信器)による信号をスマートフォンで受信し、料金を事後決済するサービス。財布から現金やカードを取り出す手間が省ける。
システムを手がける日立製作所によると、ビーコンはバス停や病院内に約60個設置。降車の際はスマホがビーコンを検知し、アプリ上に「乗車券」を自動表示する。被験者は運転手に見せて下車する。ジムに入る時も同じような仕組みで「活動利用券」が自動表示され、担当者に示してジムを利用した。
被験者の移動位置はリアルタイムで把握でき、「見守り機能」としてのサービス提供が想定されている。家族はパソコンなどで現在位置、滞在時間、移動履歴の確認が可能で、実用化すれば送迎にかかる負担の軽減などが見込まれる。
長男(32)が被験者として参加したつくば市の増田幸治さん(65)は「息子は1人で外出やお金の管理ができない。今は頑張って送り迎えしているが、この先を考えると、このような仕組みがあるとありがたい」と話した。
日立製作所によると、ハンズフリーチケッティングは既にイタリアで実用化されている。つくば市は「スーパーサイエンスシティ構想」の一環として実用化を目指しており、視察した五十嵐立青市長は「障害のある方以外にも、お金の管理に不安な高齢者や子どもの移動など、活用方法としては広がりがある。今後も実証実験に取り組んでいく」と述べた。