次の記事:茶の木村園 破産申請へ 負債約1億6000万円 茨城 

笠間長石 じわり浸透 地元作家ら 焼き物産地アピール 陶芸素材開発促進 茨城

展覧会に向けて意気込みを語る、笠間長石ブランディング協議会の大貫博之会長(中央)ら=笠間市笠間
展覧会に向けて意気込みを語る、笠間長石ブランディング協議会の大貫博之会長(中央)ら=笠間市笠間


茨城県笠間市内で産出される稲田石(稲田御影石)を使った釉薬(ゆうやく)原料「笠間長石」の活用が、笠間焼の作家の間で広がりを見せている。長石のブランディング協議会が発足し、陶器の表面をガラス質で包む釉薬を地元産として「笠間焼らしさ」の確立に生かそうと利用を進める。県立笠間陶芸大学校は原料に長石のほか、地元産クリの枝灰を加えた釉薬も開発。19日からは笠間長石をテーマとする展覧会が東京で開かれる。関係者は「笠間という焼き物産地を知ってもらいたい」と意気込んでいる。

■多様性

笠間焼は大正時代まで、つぼやすり鉢などの日用品が大部分を占めていたという。その後、日用品の分野は海外製品の流入で衰退する半面、全国から多くの作家を呼び込んだことで笠間焼の多様化が進んだ。

同大学校などによると、笠間は9割が作家、1割が窯元の構成で、作家個人が小売りできる販売形態を持った全国的にも珍しい産地だ。若手作家が参入しやすい一方、作品の品質や技術担保といった笠間焼のブランド維持が課題とされている。

■利用増

同大学校と笠間焼協同組合は2022年、地元で採れる稲田石を使った釉薬の原料を開発、「笠間長石」と名付けた。地元の石材業者が原石を砕石に加工する際に出る粉末を利用し、コストが抑えられている。原料の販売価格は他産地の長石と比べ約3分の1だ。

笠間長石には微量の鉄分が含まれており、焼き方によって色味が変化するほか、配合の割合によって黒い斑点を出せる。どの土にもなじみやすく、利用する作家が増えている。

さらに、同大学校は地元事業者や自治体などと連携し、笠間長石と、近年ブランド化が進む地元産クリの剪定(せんてい)枝灰を主原料とする「栗灰釉」も開発した。

■魅力発信

笠間を拠点に活躍する陶芸家15人でつくる笠間長石ブランディング協議会が昨年5月に発足した。展覧会の開催に照準を合わせ、打ち合わせや交流サイト(SNS)での発信や、採石場見学会の催行などを通じて魅力を掘り起こした。

19日から日本橋三越本店(東京都中央区)で開かれる展覧会では、笠間長石を共通テーマに、14人の作家が個性あふれる作品を持ち寄る。同協議会の大貫博之会長は「都内での開催は作家にとって貴重な機会」とし、「笠間長石や笠間焼を通じて、産地のことも知ってもらえたら」と期待を込めた。同展覧会は25日まで。



最近の記事

茨城の求人情報

全国・世界のニュース