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「幻の焼き物」感謝の茶会 昨年他界の陶芸家指導 児童へ最後の〝共作〟 水戸・浜田小 茨城

伊藤瓢堂さんの指導で自作した茶わんでお茶を味わう子どもたち=水戸市浜田(画像の一部を加工しています)
伊藤瓢堂さんの指導で自作した茶わんでお茶を味わう子どもたち=水戸市浜田(画像の一部を加工しています)
七面焼の茶わんを児童らに手渡す伊藤瓢堂さん(左)=水戸市浜田(2019年、水戸市立浜田小提供)
七面焼の茶わんを児童らに手渡す伊藤瓢堂さん(左)=水戸市浜田(2019年、水戸市立浜田小提供)


茨城県水戸市浜田1丁目の市立浜田小で21日、6年生児童75人が自作した「七面焼」の茶わんを使ったお茶会が開かれた。指導したのは、明治期に途絶え「幻の焼き物」とされていた七面焼を復活させ、昨年7月他界した山形県の陶芸家・伊藤瓢堂(ひょうどう)さん=享年(73)。亡くなる1カ月前に同校で制作を指導し、関係者の手で完成品が届けられた。伊藤さんとの最後の〝共作〟となる作品を受け取った子どもたちは、感謝の思いを込めて抹茶をたてた。

この日は伊藤さんの長女で陶芸家の松浦加奈さん(51)=同県=が来校し、全員分のきり箱に入った茶わんを児童に渡した。伊藤さんが短冊に記した「郷土尽心(じんしん)」の語にちなみ、今回のわんを「尽心」と命名したことを紹介。「父が心を尽くして(古い焼き物を)復活させたように、皆さんもいろんなものに心を尽くしてほしい」と思いを託した。

その後のお茶会で児童は、黒光りする自作の茶わんをうれしそうに眺めたり、保護者にお点前を振る舞ったりして楽しんだ。

伊藤さんは同県尾花沢市で「上(かみ)の畑(はた)焼」を190年ぶりによみがえらせるなど古い窯の復活に精力的だった。個展で毎年水戸市を訪れ、水戸藩9代藩主徳川斉昭が藩の財政再建のために始めた七面焼を知り、地元有志と調査を重ねて復興にこぎ着けた。

普及にも取り組み、水戸市内の小学校7校で陶芸教室を開いた。浜田小では約20年間指導し、近場で採れる粘土を使い児童が手びねりで制作してきた。今回は伊藤さんの遺志を継ぎ松浦さんが茶わんを仕上げた。

伊藤さんは病の体を押し、わんの底に児童の名前を筆書きしていたといい、松浦さんは「父の遺作と言える。子どもたちに地元の工芸の素晴らしさを知ってほしいとの思いで水戸に通ったと思う」と語った。

同校6年、鈴木美結さん(12)は「お茶会にも来てくれると思ったので悲しい。器はすごくきれいで、(伊藤さんが)手直ししてくれたのかなと思うとうれしい」とほほ笑んだ。



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