TX土浦延伸 27年後黒字 茨城県試算 東京一体整備で
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茨城県は25日、つくばエクスプレス(TX)土浦延伸の事業計画素案を発表した。つくば-土浦間の中間駅を1駅とするほか、地下部分を短縮するなど事業費を縮減。延伸に伴う沿線開発で移住増や企業立地など将来の需要拡大を見据えた予測を反映し、東京駅への延伸と一体で整備した場合、27年後には収支が黒字化すると試算した。
素案では計画区間をつくば-新土浦駅とし、JR土浦駅に隣接した終着駅を整備する。概算事業費は約1320億円。2駅を想定していた区間内の中間駅を1駅としたほか、地下部分を短縮させるなどしてコストを削減し、延伸方面を決めた2023年6月の想定から約80億円縮減した。同区間の延長は約10キロ。所要時間は約9分で、運賃は340円とした。
事業費縮減に加え、延伸による移住者や移動者の増加、企業立地推進などを反映した新たな試算も盛り込んだ。05年のTX開業以降、輸送人員は想定を上回った増加傾向にあることから、将来的な需要拡大を見据え推計した。
試算では、同区間の輸送人員を1日当たり2.2万~2.5万人と見込む。整備の利点が投入費に見合うかを示す指標「費用便益比」は1.60となり、国が延伸を許可する目安とされる「1」を上回った。前回試算では0.60だった。当初、黒字転換が見込めないとしていた採算性も、延伸区間の運行開始から43年後に黒字化するとした。
国の交通政策審議会は東京-秋葉原の2.1キロ区間を「都心部・臨海地域地下鉄構想」とともに答申に盛り込み、県は土浦延伸と一体での整備を目指している。素案では、東京延伸と一体整備した場合の概算事業費は計3070億円とし、費用便益比は1.35、延伸から27年後に黒字化すると試算した。
土浦延伸について、県は30年ごろをめどに交通政策審議会答申での位置付けを目指す。今後は東京や埼玉、栃木の沿線都県や国土交通省などと協議し、素案への理解を促す方針。
県交通政策課は「延伸は県の均衡した発展や首都圏との経済、交流促進に寄与する。常磐線との接続で、災害時の避難や物資輸送などの効果も大きい」とした。
■将来需要の拡大反映
県が事業計画素案で示した採算性や費用便益比の試算は、土浦方面への延伸を決めた23年6月当時の数値から大幅な「上方修正」となった。延伸で生じる社会経済活動の増減予測を踏まえた「応用都市経済モデル」の手法を用い、好調に推移するTXの将来的な需要拡大を反映させた。
今回の試算は、延伸に伴う移住、旅行など新たな人の流れや企業立地など土地利用の動きも踏まえた。鉄道や道路整備に対する試算は、現時点での人の移動総量を基に予測する「四段階推計法」が一般的。前回はこの手法を用いたが、県は「TXの需要予測には土地利用なども踏まえる必要がある」と判断した。
TXの輸送人員はコロナ禍で一時落ち込んだものの、右肩上がりが続く。開業当時、25年度に「1日当たり31万5000人」とした平均輸送人員は、13年度に前倒しして達成した。