日立市が流域治水計画 遊水地や田んぼダム 市管理の63河川 茨城

2023年の台風13号に伴う大雨で被災した茨城県日立市は、市管理河川を対象とする独自の「流域治水計画」を策定し、3日に発表した。遊水地の整備や休耕田を使った「田んぼダム」の活用などハードとソフト対策を組み合わせた38施策を推進し、浸水被害の軽減につなげる。被害の大きかった河川では25年度から計画事業を本格化させる。
同市は23年9月8日、台風に伴い線状降水帯が発生。わずか2時間半の間に1カ月分の降水量を上回る199ミリの雨量を観測した。影響で山地からの小規模で急流な河川の水位が急上昇し、市内河川の6割に当たる39河川が氾濫した。1人が死亡、住宅525棟が浸水した。
計画はこれまで進めてきた河川インフラの整備に加え、地域で協力しながら流域全体で水害の軽減を目指すのが狙い。対象は市が管理する63河川で、総延長は約130キロ。25年度から5年、10年の短中期と20年の長期で対策を進める。2級河川は県と連携して対策に当たる。
計画に位置付けた主な施策では、調整池や遊水地の整備などの従来からの対策のほか、水田や休耕田を活用した雨水流出の抑制▽河川監視カメラの設置と映像の公開▽学校などの公共施設への雨水貯留施設の設置▽森林からの流木防止▽住宅のかさ上げ工事や防水板設置への助成-などを盛り込んだ。
市民から寄せられた意見を踏まえ「土砂・洪水氾濫対策」を素案から追加した。対策の優先度も設定し、人口が多い市街化区域を流れる18流域23河川に関しては、地域ごとの対策を示した「プロジェクトマップ」を作成。水害リスクの程度や具体的な施策を明記した。
市は25年度一般会計当初予算案に田尻川など6河川の治水対策事業費として4億5124万円を計上し、計画に位置付けた施策を本格化させる。各河川で基本設計を進めるほか、数沢川では国道6号横断部の改修を、北川の上流部では護岸改修に着手する。
市によると、さまざまな防災対策を組み合わせて水害に備える流域治水について、市町村独自に計画を策定するのは珍しい試み。担当者は「国の方針や社会の動向も踏まえながら実効性のある対策を進めていきたい」としている。