次の記事:TX土浦延伸 27年後黒字 茨城県試算 東京一体整備で 

《東日本大震災14年》たかはぎFM 終了へ 震災直後に立ち上げ 防災や身近な話題伝える 茨城

街の話題や防災情報などを発信してきた「たかはぎFM」のスタジオ=高萩市春日町
街の話題や防災情報などを発信してきた「たかはぎFM」のスタジオ=高萩市春日町


東日本大震災時の臨時災害放送局(災害FM)としてスタートし、茨城県高萩市民に親しまれてきたコミュニティ放送局「たかはぎFM」が3月末で放送を終了する。通常時は街の話題や防災情報を発信し、災害発生の際はきめ細やかな避難情報や復興状況を市民に届けてきた。だが、防災行政無線や防災アプリ、交流サイト(SNS)といった情報手段の整備が進んだことから、同FMの閉局を決めた。ファンからは「寂しい」と惜しむ声が上がる。運営するNPO法人は「身近な情報を伝え、安心感を与えられた」と振り返った。

■被災者に寄り添う

同FMのスタジオは同市春日町の総合福祉センターの一角にある。内壁には「番組の途中ですが、ここで地震の情報をお伝えします」「ただちに身の安全を確保する行動を取ってください」など、地震発生時の緊急マニュアル原稿が張られている。警報や気象状況を迅速に伝えるため、スタジオにテレビモニターも設置されている。

パーソナリティーとして活動する矢吹勉理事長(75)は、マニュアルを示しながら「落ち着いて話さなければ、市民に不安を与える」と強調。「少しでも早く伝え、安心してほしい」と話す。

同FMは放送法に基づいて大規模災害時の被害軽減を狙いに、被災自治体などが立ち上げる災害FMを前身とする。2011年3月11日の東日本大震災を受け、同市が立ち上げた。市などによると、情報連絡手段がまだ確立されない中、同年6月上旬に開設された。生放送では臨時職員が余震や津波警報、放射線量のほか、給水活動や支援物資の配給場、罹災(りさい)証明の手続きなど行政情報を発信し、被災者に寄り添ってきた。

■記憶の風化防止

13年4月からはコミュニティFM体制に移行。災害時の正確な情報伝達手段として備えつつ、通常は街の活性化につなげようと、同NPOが市から運営を引き継いだ。

震災の記憶の風化防止や減災へ向け、移行当初から毎日2回「防災情報コーナー」の放送時間を設けた。スタッフが集め、編集した「地震が起きたときの対応」や「ハザードマップの説明」「線状降水帯の予測」といった184本もの原稿を順次放送している。

「防災行政無線や防災アプリにはない機能。日頃から情報を発信し、防災や減災に貢献できた」と矢吹理事長。23年の台風13号に伴う水害の際には、災害時の公的支援に詳しい専門家の講話を流すなどした。

■「役割果たした」

一方、東日本大震災後、情報手段の多様化が進んだ。厳しい財政状況や機器の更新も重くのしかかった。1月中旬に臨時総会を開催し、閉局を決めた。矢吹理事長は「今は素早く、手軽に情報を確認できるようになった。(同FMは)一定の役割を果たした」。

長年のファンだった市内に住むパートの菊地友子さん(68)は「災害を含めて高萩の話題を細かく伝えてきてくれた。ラジオ世代の私たちにとって閉局は大変寂しい」と惜しんだ。

総務省関東総合通信局によると、災害FMは東日本大震災時に茨城県を含む4県で計30局が開設されたが、現在は全て閉局。その後、コミュニティFMに移行したケースが多いという。

能登半島地震の被災地では、災害FM開設を模索する動きがある。関東総合通信局によると、停電やインターネットの接続が不安定となり、情報伝達に課題が残った。石川県輪島市町野町では2月、災害FMの試験放送が実施された。

高萩市は「複数の情報手段を組み合わせることが大切」とし、大規模災害時には「災害FMの再立ち上げを検討する」としている。矢吹理事長は再立ち上げの際、「FMとしてのノウハウや他者とのつながりを生かし、協力したい」と力を込めた。



最近の記事

茨城の求人情報

全国・世界のニュース