自動車研 災害備え連携 県警・消防、対応力向上へ 救助隊宿泊やヘリ駐留 茨城

地震や豪雨などの大規模災害への対応を一層強化しようと、茨城県警と消防は日本自動車研究所(同県つくば市苅間、鎌田実研究所長)と協力体制を深めている。災害時には城里テストセンター(同県城里町小坂)を他県警の救助隊が宿泊する場として活用するほか、ハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)など、時代の中で進化を続ける自動車の特性について学び、対応力の向上につなげる。
県警と同研究所、水戸消防局は2018年から合同訓練を進めている。2月、城里テストセンターで災害時の連携協定を締結。県警の滝沢幹滋本部長と同局の大信成人消防局長が協定書に署名した。今回の協定により、同研究所の広大な敷地を、大規模災害の発生時に茨城県に派遣された他県警の救助隊の宿泊地やヘリコプターの駐留所として活用していく。平時は、研究所や関連機関による座学を行い、自動車に関する教養を深めて多様な車種の特性を学ぶ。
この日は、車の安全性能を評価する独立行政法人「自動車事故対策機構(ナスバ)」の協力を受け、近年流通している車両の特徴を学び、解体方法を模索した。同機構の担当者は、2023年12月に神奈川県厚木市の駐車場で起きた火災について詳しく解説。外板に樹脂類が多く使われていると発熱量が増えることや、近年ニーズの高いワゴン車など車幅が広く車室と荷台が一体化している車両の特徴を説明した。
EV車が搭載するバッテリーの重さや素材の燃えやすさにも注意を促した。一方、駐車場の広さは従来と変わらないため、隣接する車両同士の距離が短くなり延焼しやすくなっていると指摘した。
受講後、同機構の提供により、国内大手の自動車メーカー3社が衝突事故実験で使用した車両を用いて、解体訓練を実施。隊員らは車内に人がいることを想定して、フロントガラスを電動カッターで切ったり、スライドドアをバールでこじ開けてより迅速な救助方法を探った。
線状降水帯による記録的大雨を想定した訓練も、広大な敷地を使って行うことができるようになった。
今回、県警と消防の合同調整所を設置し、要救助者や埋没車両の情報を集約することで、現場への指示をスムーズにする作業に取り組んだ。土砂崩れにより埋もれた乗用車を重機で救出したり、土石流に巻き込まれた要救助者を手掘りで探したりする実践的な訓練も行った。さらに埼玉県警のヘリコプター「みつみね」の協力を得て、孤立集落に取り残された要救助者をホイストと呼ばれる巻き上げ装置で救出する、スケールの大きな訓練も実施した。
県警の小泉辰也警備部長は「連携をより強固にし、災害救助能力を向上させたい」と期待した。大信局長は「車体の構造や動力の性質など教養を深めて現場に生かしたい」と意欲を示した。