《東日本大震災14年》緊急輸送道の茨城県管理橋 耐震補強「未完」1割超

災害時に重要な役割を果たす「緊急輸送道路」で、茨城県が管理する橋のうち、1割超の72カ所で耐震補強を終えていないことが、県の8日までの調べで分かった。茨城県では2011年の東日本大震災時、橋の崩落により死者が出た。県は限られた予算の中で優先順位を付け工事を進めている。
同道路は救助や物資供給など災害時の活動のため、緊急車両の通行を確保すべき重要路線。行政機関や病院、空港、主要駅など防災拠点を結ぶ。
県道路維持課によると、同道路上の県管理の橋のうち、耐震補強の対象は橋脚を持つ長さ15メートル以上の橋で、計533カ所。このうち現時点で、86.5%に当たる461カ所の補強を完了している。24年3月末時点の進捗(しんちょく)率は86.1%で、都道府県・政令市の平均より5ポイント程度高い。
残りは13.5%の72カ所で、うち半数以上で補強事業に着手済み。18年度に着工した坂東市と千葉県野田市をつなぐ芽吹大橋(536メートル)は27年度の完工、21年度に着工した大洗町の大洗袖ケ浦橋(185メートル)は29年度の完工を目指す。橋の長さが100メートルを超える大規模な橋は工事が長期にわたるという。
耐震補強は、阪神・淡路大震災を受けて1996年に橋の耐震基準が厳格化したのに伴い、順次進めてきた。22年3月には県橋梁(きょうりょう)長寿命化修繕計画を改定し、着手の優先順位を設定。鉄道をまたぐ「跨線(こせん)橋」や道路をまたぐ「跨道橋」は優先度が高く、落橋による二次被害の恐れを考慮した。工法は橋脚の回りを鉄筋コンクリートで覆い、強度を高める「巻き立て工法」を主に採用している。
東日本大震災では、行方市と鉾田市を結ぶ鹿行大橋が崩れ落ち、通行中の車両1台が転落。男性1人が死亡した。同橋を含む県管理の橋12カ所が損傷で通行止めとなり、いずれも架け替えや修繕・補強を終えた。
同課の担当者は「耐震補強を早期に進め、緊急輸送道路の機能が発揮されるようにするとともに、県民の安心と安全を確保したい」と話した。