《広角レンズ》不登校、校内に居場所 茨城県内、フリースクール増
学校の空き教室などを活用し、不登校の児童生徒をサポートする「校内教育支援センター(校内フリースクール)」が茨城県内の小中校で広がっている。学校に行けるが教室には入れない。そんな子どもたちの新たな選択肢となるか。担任のサポートや支援員の配置など、教室の確保にとどまらないきめ細かな対応が求められている。
2月下旬、茨城県守谷市御所ケ丘4丁目の市立御所ケ丘中の昇降口に近い教室で、2年生の女子生徒(14)が机に向かっていた。隣で女性支援員が見守る。
不登校の生徒が通える市の事業「校内フリースペース」として空き教室を改修。仕切り板で個別スペースを確保した。同校の場合、ここでの過ごし方は自習を基本に、内容は生徒に委ねる。絵を描いても読書をしてもいい。登下校時間も自由だ。
女子生徒は2年生に進級してから教室に入れなくなり、不登校になった。現在は毎日のようにフリースペースに通う。この日は午前10時ごろに登校し、給食前に下校。部活動の参加日は給食を取る。生徒は「ここが落ち着く」と話す。
立ち上げ時から携わる椎名純子教諭(63)は「人に会いたくない、集団が苦手という生徒が安心して来られる学校内の居場所を目指している」。フリースペースに登校する間も担任は継続し、教室を訪ねたり、学校行事の参加を呼びかけたりする。一方で「プレッシャーにならないよう」対応を見極める。
◆先駆け
フリースペースは守谷市独自の呼称。一般的に「校内フリースクール」「校内教育支援センター」と呼ばれる。文部科学省によると、明確な定義はなく、運用は自治体や学校の裁量に任される。空き教室に支援員を配置するケースが多い。
市は2022年度、県内で先駆けて市立中学全4校に新設。各校に教員免許のある支援員1人を配置した。その後、小学校にも拡大し、25年度は市立小中全13校で実施する。
フリースペースが実施される前は、市総合教育支援センターで不登校の子どもが通う適応指導教室を開いてきた。遠方に住む子は親の送迎なしでは通えず、利用しづらいのが課題だった。
市教育委員会によると、フリースペースの1カ月当たりの利用者は、約75人(24年11月)。登校すれば出席と見なす。利用者のうち、23年度の1年間で8人が通常の教室に復帰した。
◆36市町村
校内フリースクール開設に伴う支援員の配置が当面の課題だ。人件費を工面する必要があり、このため県は本年度、人件費の補助事業を始めた。これまでに10市村24校が活用している。
県教委が昨年9月に行った調査によると、県内36市町村の小・中・義務教育校の約25%に当たる159校が校内フリースクールを設置した。
茨城大の生越達教授(教育方法学)は校内フリースクールの在り方について、「従来の学校的価値観を押し付けたり、単なる教室復帰までの通過点とせず、『学びの個性化』の場として認めることで、学校の価値観を変えるチャンスにもなる」と話した。












