アーベル賞 柏原氏、水戸で幼少期 納豆の記憶、笑い誘う 茨城

優れた業績を上げた数学者に贈られる「アーベル賞」の受賞が決まった京都大の柏原正樹特任教授(78)は27日、京都市左京区の同大で記者会見に臨んだ。柏原氏は1歳ごろまで茨城県結城市で過ごした後、移り住んだ現在の同県水戸市赤塚地区で、小学1年生まで生活したという。茨城新聞の取材に対して水戸での幼少時代の記憶をひもとき、「納豆を売りに来た人から納豆を買ったことも覚えている」と振り返った。「納豆はやっぱりおいしい」と話し、会場の笑いを誘った。
柏原氏は時折笑顔を見せながら質問に答え、会見は和やかに進んだ。数学の苦手な子どもたちにメッセージを求められると、「今の数学は受験にこだわりすぎて、記憶力のいる学問と誤解している子どもたちがいると聞いた。そうではなく、自分で面白い発想を行っていくのが数学」と力を込めた。
柏原氏と親交のある同大高等研究院長の森重文さんは「私が学生の時から有名な方で、尊敬しつつ拝見していた」と印象を語った。人柄について「面白い人。からかっても怒られない性格の良さを感じている」と説明した。
柏原氏の受賞と幼少時代の記憶に、水戸市でも反響が広がった。県納豆商工業協同組合の理事長で、だるま食品(同市)の高野友晴社長は、納豆売りについて江戸時代からあったとし「当時は豆腐売りのように売り歩き、昭和期では自転車に乗って、わら納豆や松の皮で作る経木に包んだ経木納豆を各家庭に売り回っていた」と解説。納豆売りの人から納豆を買ったという柏原氏の思い出について「今は見られない光景で、記憶に残っているのは納豆屋としてとてもうれしい」と話した。
大井川和彦知事は柏原氏の受賞について「長年にわたる熱意とたゆまぬ努力のたまものであると深い感銘を覚える。功績に改めて深く敬意を表するとともに、県民を代表して心からお祝いを申し上げます」とコメントした。