選定療養費 軽症の搬送1割減 3カ月で徴収940件 茨城

緊急性のない救急搬送患者から追加料金の「選定療養費」を徴収する茨城県主導の制度で、県は27日、開始した2024年12月から3カ月間の検証結果を公表した。対象22病院での徴収率は約4%で、県内全体の「軽症等」の救急搬送件数は前年同期に比べ1割近く減少した。呼び控えで重症化した事例の報告はなかった。救急車の適正利用や救急医療の逼迫(ひっぱく)緩和に「一定の効果があった」と結論付けた。
県保健医療部によると、今年2月末までの3カ月間で、対象22病院への救急搬送件数のうち選定療養費の徴収件数は4.2%の940件。徴収例は風邪の症状、腹痛、発熱、打撲、めまい・ふらつき、軽度の切り傷などのほか、鼻血や便秘もあった。
インフルエンザの記録的な流行が見られ、救急搬送件数は近隣5県で前年同期比約4~9%弱の増加となったが、茨城県全体は0.5%減の3万8041件。このうち「軽症等」は1万6162件で9.2%減少、中等症以上は2万1879件で7.1%増加した。
県内の医療機関や消防本部などに要請している、救急車の呼び控えで重症化した事例の報告はなかった。また対象病院や消防本部から、徴収を巡る大きなトラブルの報告もなかった。
一方、制度に関する県設置の相談窓口には91件の問い合わせがあり、否定的な意見や徴収されたことへの不満は12件だった。このうち「救急電話相談で救急車を呼ぶよう助言されたが徴収された」との苦情で、返金に至った例もあった。
活用を呼びかけている救急電話相談の件数は6.9%増加。つながりづらい状況が発生したため、平日午後4~5時の回線数を制度開始前の3倍にするなど増設で対応した。
検証は、県医師会や対象病院、各消防本部など関係者で構成される会議で月1回実施してきた。頻度は再考した上で、継続する方針。県は、命に関わるような緊急時には迷わず救急車を呼ぶよう改めて訴えるとともに「引き続き、取り組みの適切な運用を図っていく」としている。
制度導入は都道府県単位では初。救急医療現場の逼迫を緩和し、救える命が救えなくなる事態を回避する狙いがある。