水戸で国際音楽祭を 来秋、観光地舞台に 大学長や作曲家ら計画 茨城


大学関係者や作曲家らの有志が、茨城県水戸市や周辺の観光地を舞台にした国際音楽祭を来年秋に開こうと計画を進めている。劇作家の平田オリザさんが展開した地方の環境を生かす演劇や芸術イベントを水戸に広げ、「音楽と観光の融合」をテーマに据える。今年10月にはプレ開催として、その手法を実践した兵庫県豊岡市の豊岡演劇祭、岡山・香川両県の瀬戸内国際芸術祭との共同制作で、平田さん演出の新しいオペラを水戸市で開く。
平田さんは近年、芸術による地方の振興に積極的で、2020年からは豊岡市の観光地、城崎温泉街をはじめとして劇場や公園、神社と屋内外で演劇やダンスなどを開催。昨年も2週間以上にわたり、約70のプログラムが開かれた。23年はコーディネーターとして、福島県のJR常磐線沿線のホールや公園などを舞台に常磐線舞台芸術祭を初開催した。
水戸の国際音楽祭は常磐大学長の富田敬子さん(67)が総合プロデューサーを務める。国連に勤めた富田さんは欧州も頻繁に訪れ、小都市でも音楽が生活に身近だったことに魅力を感じていた。「かしこまった鑑賞でなく、ワインを飲みながら楽しむようなことができないかと思っていた」という。
水戸市が人口減少と中心市街地の空洞化を課題に抱え、活性化にも思案を巡らしていた。そんな中、ニューヨークを拠点に活動していた作曲家の中堀海都さん(35)と出会い、音楽を通じた振興に意気投合。中堀さんは音楽祭の総合音楽ディレクターとなる。
中堀さんは雅楽や伝統芸能の影響を受けて作曲しつつ、演劇など異なるジャンルとのコラボにも熱心で、平田さんともタッグを組み豊岡演劇祭で室内オペラ「零(ゼロ)」を手がけた。
中堀さんは、水戸は水戸芸術館が音楽、演劇、美術を柱として市民の造詣も深いとし、「さらに新しい文化が求められるだろう。今回の音楽祭は三つの柱を成熟させるきっかけになるのでは」と期待を込める。
音楽祭の会場は屋内で水戸市民会館や水戸芸術館、佐川文庫などを、屋外では偕楽園や千波湖畔、大手門を、バレエやオペラなどの舞台に想定。自由参加の自主公演も募り、一体的に盛り上げる。
10月11日に水戸市のザ・ヒロサワ・シティ会館で予定するプレ開催は「零(ゼロ)」の続編となるシアターオペラ「その星には音がない-時計仕掛けの宇宙-」を上演する。高校生を招いた鑑賞会や、同市五軒町の水戸奏楽堂、偕楽園または弘道館での音楽公演も予定する。
近く、実行委員会の初会合が水戸市内で開かれる。富田さんはインバウンドの誘客も期待できるとし、「水戸も多くの観光資源があり、芸術観光都市をつくれる。国際芸術交流の拠点になることを目指したい」と話している。