地域産業振興に力 知名度、効果PRが鍵 いばらきデザインセレクション20年

茨城県内の優れたデザインを有識者が審査し、選定する「いばらきデザインセレクション」。地域イメージを高め、産業振興につなげようと2005年度に始まり、24年度で20回目を迎えた。応募総数は累計2000件を超え、奨励を含め選定総数は700点を超える。審査員らは「年々レベルが上がっている」と口をそろえる。今後、さらなる知名度向上や、選定効果のアピールが鍵となる。主催する県は「PRに力を入れ、国内で存在感のある制度にしたい」と意気込む。
デザインセレクションの選定品は、県がPRや販路拡大を後押しする。県内や東京のアンテナショップで開かれるフェアなどで展示されるほか、日本デザイン振興会とも連携し、グッドデザイン賞につなげるなどの支援も行われてきた。選定から漏れても、フィードバックを行い、継続的なデザイン開発を促す。
県技術革新課によると、初年度は応募数が64件、選定数は20件だった。24年度は応募数が過去最多の144件、選定数も最多52件(奨励含む)と順調に拡大している。
これまで選定された事業者は、個人レベルの小規模なところも多い。
竹を籠状に編み、衣類などの収納として使うつづらを作る高橋つづら店(同県つくば市研究学園)は、カラフルなデザインにするなど商品にさまざまなアレンジを加え、ペンケースも作成するなどして、複数回選定されている。デザインセレクションについて、同店の高橋諭さんは「1人でやっているような人には広く知ってもらう良いチャンス」と話す。
同店を含めつづら店は全国で3軒にまで減っており、「つづらを作っている人がいることを、まず知ってもらえた」と効果を語った。
1990年代のバブル崩壊以降、大手企業の受注頼りだった県内の中小企業は、自社製品の開発などを巡る企業力の育成が課題となっていた。県はデザインの可能性に着目し、県デザインセンター(同県ひたちなか市新光町)を設立。デザインセレクションが始まった。初回から15年にわたり審査委員長を務めた、筑波大の蓮見孝名誉教授は「社会におけるデザインの必要性を訴えていこうという流れだった」と当時を振り返る。
蓮見氏によると、大量生産・消費が重視されてきた中で、デザインへの注目を高めることは生活の価値を高める行為になるという。応募内容が年々、レベルが上がり、多様化も進んでいる。蓮見氏は「選定は客観的な評価。(選ばれた事業者は)誇りを持ってもらいたい」と話した。
ある事業者からは「応募するのは一部の事業者にとどまるのではないか」との冷静な声も聞かれた。デザインの必要性を認識し、より多くの事業者が参画するためには、制度自体の知名度向上や選定効果のアピールが不可欠だ。
同課の宇都宮隆広課長は「セレクションをより広く知ってもらうことが重要。国内でも存在感のある制度にしていきたい」と今後の展開に意欲を示した。
★いばらきデザインセレクション
茨城県内の優れたデザインを有識者らが審査し、選定する顕彰制度。県が主催する。製品・工芸▽グラフィック・パッケージ▽空間・建築▽ソーシャルデザインに、2023年度からコンテンツ・情報デザインが加わり、計5部門からなる。食品や建築物、広報誌やプロジェクトなど、選定品の種類は多岐にわたる。24年度までの累計応募総数は2188件。選定総数は奨励を含めて703件。