ボタンエビ養殖実証 26年度出荷目標 茨城県、新特産品に


気候や天然資源の変動による漁獲量の減少に備えようと、茨城県は2025年度、ボタンエビ養殖技術の実証事業に乗り出す。約2年間かけて、稚エビを保冷コンテナで出荷サイズまで育て、26年度からの試験出荷を目指す。県は希少価値が高いボタンエビを茨城県の新たな特産品にしていきたい考えだ。
ボタンエビは太平洋側に生息し、茨城県沖では那珂湊地区より北の底引き網で揚がる。数が少なく高価で、とろけるような甘さが特徴。天然ものも養殖ものも味に変わりはないという。
県水産試験場(同県ひたちなか市)によると、天然ものの近年の漁獲量は22年は5.88トン、23年は1.5トン、24年は9.3トンと、年によって大きく変動する。
ボタンエビの養殖について、県は「独自性」と「高価格帯」を挙げる。エビ養殖の中でも、「バナメイエビ」は約4カ月と短期間で出荷でき、近年は国内約30カ所で広く養殖されている。県内でも参入する企業が出始めている。一方で、ボタンエビは「茨城県以外で、養殖に取り組んでいる都道府県はなく、希少性が高い」(県水産振興課)。
ボタンエビの養殖は21年度から、県水産試験場の栽培技術センター(同市)陸上施設で行われきた。エビが成長しやすい水温や適した餌などの基礎的な技術が研究されている。担当する同試験場定着性資源部の技師、水谷宏太さん(30)は「試行錯誤しながらやっている。今後も改良を重ねていく」と話す。
基礎的な技術研究にめどが立ったことから、県は25年度、保冷コンテナでの実証事業へ移行し、採算性を検証していく。
現在行っている陸上養殖は水用のヒーターやクーラーを使っているため、生産コストが高くなるといった課題がある。同課は「保冷コンテナの中で養殖することで、温度変化が緩やかになる」と説明した。
県は27年度以降に、同試験場で開発した養殖技術を活用し、事業化を目指す。将来的には県内の飲食店や宿泊施設での提供を見込む。同課の荒山和則課長補佐(48)は「国内初の(ボタンエビ)養殖技術で、茨城県の新たな名物をつくる」と意気込む。