コウノトリ、水戸で誕生 市「歴史的、うれしい」 育成管理の事業費確保へCF 茨城


国の特別天然記念物コウノトリのカップルが茨城県水戸市内に巣を作り、ひなが生まれた。市によると、餌を吐いてひなに与えるしぐさが4月6日以降、複数回確認されたという。市内で営巣やひなの誕生が確認されたのは、1971年に国内で絶滅してから初めて。識別用の足輪から、カップルは同県神栖市から移動してきたとみられる。水戸市はひなの性別判定や血液検査、足輪の装着を行う。事業費約100万円を集めるため、ふるさと納税を活用したクラウドファンディング(CF)を14日に始める。
同市内に巣を作ったのは、千葉県野田市生まれの4歳の雄と、福井県生まれの6歳の雌のカップル。個体識別のために取り付けられた足輪から判明した。市民からの連絡を受けた市職員が3月7日、身体を伏せて卵を温めたり、転がしたりする行動を確認。4月6日からは餌を吐き戻してひなに与えるようなしぐさを確認し、ひなが生まれたと判断した。
市によると、2羽は茨城県行方市内で営巣し繁殖した後、神栖市に移動。昨年7月ごろから水戸市内での飛来が確認され、今年1月、同市常澄地区の電波塔のてっぺんで2羽の巣が見つかった。市は電波塔の所有者に伝え、営巣したままにする許可を得た。
巣は地上から30メートル以上の高さにあり、辺りには田んぼが広がる。市担当者は「歴史的なことで驚くと同時に、水戸市の環境を気に入ってくれたのがうれしい」と歓迎した。
コウノトリは、全長約1メートル、羽を広げると約2メートルになる大型の鳥類。かつては国内に広く分布していたが、太平洋戦争時に巣を作るアカマツが切られ、当時の農薬に含まれていた水銀などの影響でコウノトリは減少。71年に絶滅した。
最後の1羽が亡くなった兵庫県では、旧ソ連から譲り受けた6羽を基に人工飼育下で繁殖を重ね、数を増やした。2005年に放鳥を始め、野外に住む個体数は452羽(2月末時点)まで回復した。
子育て中のコウノトリは警戒心が強く、市は営巣場所を公開しない。市担当者は、「静かな環境で安心して子育てできるよう協力してほしい。もし見つけても、150メートル以上離れて観察し、交流サイト(SNS)などで場所を発信するのは避けてほしい」と呼びかける。
市は5月21日ごろ、兵庫県立コウノトリの郷公園などの協力を得て、ひなの性別判定や血液検査、足輪の装着を行う。事業費はCFで賄う予定で、ひなやコウノトリの写真を市のホームページやCF上のサイトなどで随時公開する予定という。