当事者、共感の場5年 高次脳機能障害 本心語り孤立を防ぐ 茨城

脳の病気や交通事故の後遺症で記憶と行動に支障が出る高次脳機能障害について、茨城県内の当事者が語り合う集いの場ができて丸5年が経過した。「見えない障害」と言われ、社会の認知や理解はまだ十分ではない。集いは、当事者同士が胸の内を明かして共感し合い、孤立を防ぐ大切な居場所となりつつある。
3月中旬の日曜日。同県土浦市内の会議室で、高次脳機能障害の当事者十数人が輪になって語り合った。
「仕事がうまくいかず困っている」「(読み解くのに)難しい字ばかり並ぶのが壁になっている」「隠している人は多いはず」
進行役が高次脳機能障害について「発信したいイメージはある?」と問いかけると、「七色。一つの(病気の)名前なのにこんなにも症状が違う」「ナルシシスト。自己主張が強い」などの答えが返ってきた。「ゆるキャラ」を作って発信しようとの提案も見られた。「もっとオープンにできる世の中に変えなくてはいけない」との意見には一同がうなずいた。
■居心地良さ
集いは、県内家族会「高次脳機能障害友の会・いばらき」が主催。2020年4月に始まった。隔月で開き26回を数える。家族がファシリテーターで進行役を務め、話の流れをつくる。家族会は「苦しいのは自分だけではないと、共感し合える居場所にしたい」と狙いを説明する。
この日は一般に分かりにくい自分たちの障害について、どうすれば広く伝えられるか約90分間話し合った。参加した同県神栖市の御所脇充さん(41)は「本心を話し合えるのがいい。気兼ねなく話せる。当事者と触れ合えるのが良く、今後もこの関係が続けばいい」と居心地の良さを強調。同県つくば市の滝沢勇太さん(40)は「悩む人がいたら、プラスの考えに持っていけるような会にしたい」と支え合いの場所を目指す。
■自己肯定感
高次脳機能障害になると、新しいことを覚えられない▽集中力が続かない▽怒りっぽくなる-などの症状があり、日常生活にも影響がある。後遺症の種類や重さは人それぞれで、外見では分かりにくい人もおり、「見えない障害」とも言われる。「怠け者」などの偏見を持たれ、当事者は孤立することもある。
当事者会のアドバイザーで臨床心理士の笹島京美さんは「当事者同士で話し合うことで、フォロー役などその場で自分の役割を見つけられる。社会の一員になったように感じられ自己肯定感にもつながる」と、集いの意義を強調する。
高次脳機能障害を巡っては、支援拡大のための法案を自民党が公明、野党に呼びかけ、今国会の提出を目指している。