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水害契機に絆再生 取手・双葉地区 住民、共助の浸透期待 茨城

多くの住民でにぎわったフリーマーケット=取手市双葉
多くの住民でにぎわったフリーマーケット=取手市双葉


2年前の大雨で被災した茨城県取手市双葉地区で、災害を機に希薄化したコミュニティーの再生が進む。住民が立ち上げた交流拠点「つなぐ・双葉地域交流センター」を軸に住民同士の絆が深まりつつあり、同施設で20日に開かれたフリーマーケットは活気であふれた。施設を運営する住民組織の代表は、災害時の「共助」につながるよう期待を寄せる。

20日昼前、同センターではフリマの開始前から住民が長い列を作った。地区内でサークル活動を終え、仲間約10人と駆け付けた鈴木ふみさん(81)は「高齢者はテレビを見て過ごしがちなので、外に出るいい機会」と笑った。

フリマは同施設を運営する住民組織「つなぐ」が昨年から始め、今年で2回目。地域のにぎわいづくりとして、同地区の焼き鳥屋、カフェ、幼稚園、農家が食べ物や野菜、手作り雑貨などを販売した。

同地区では2023年6月2日から3日にかけ、台風2号と梅雨前線の影響で、約1100世帯のうち約半数が浸水。水害は、住民コミュニティーの課題も浮き彫りにした。

約60年前に開発され「新興団地」だった同地区は、今月時点で高齢化率47%と高齢者の割合が増加している。夏祭りや子ども会などの地域活動は衰退し、引きこもる高齢者も目立ち始め、希薄化した人間関係は水害時の安否確認を難航させた。「つなぐ」代表の中尾正幸さん(66)は「隣に誰が住んでいるのかも、分からない状態だった」と振り返る。

同施設は、浸水した空き店舗をNPOや自治会などが改造した。24年3月から「つなぐ」が運営を引き継ぎ、毎週1日開放。お茶会や園芸など住民交流の場となっており、会員は120人まで拡大した。

会員で、運営ボランティアの沢渡美知子さん(74)は、毎日のように敷地の花壇の手入れや除草をしてきた。「(同センターで)久しぶりに再会した知人も多い。人と人のつながりが、とにかく楽しい」と語る。

こうした取り組みの影響もあり、住民コミュニティーは再生へ動いている。昨年8月の台風で同地区に「高齢者等避難」が発令された際は、住民が独居高齢者に安否確認するなど「共助」が見られた。今回のフリマでは足の不自由な高齢者に住民が声をかけ、車で送迎した。

絆の深まりを実感する中尾さんは「ここを起点に住民が助け合う『共助』を浸透させたい」と、災害に強い地域づくりを見据える。



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