1972年創業・鹿嶋の洋菓子店「プティ・ドール」 5月閉店、惜しむ声 飯島さん 夫の遺志「やりきった」 茨城

茨城県鹿嶋市宮中の洋菓子店「プティ・ドール」が5月中旬で閉店する。前身の「ポンス」は1972年に開店し、53年にわたってケーキや焼き菓子で地域住民に幸せを届けてきた。社長の飯島洋子さん(75)は「主人の作ったケーキを終わらせたくなかった」と、前社長で夫の文夫さんが2012年に亡くなった後も店を続けてきたが、最近は「やりきった」との思いに包まれ、閉店を決めた。利用客からは閉店を惜しむ声が寄せられている。
厚めのイチゴと甘さ控えめの生クリームが売りのショートケーキ、レモンケーキやマドレーヌといった魅力あふれる商品がそろう。夏はシャインマスカット、秋はイチジクなど四季折々のフルーツが楽しめる「季節のタルト」も外せない。桃の種をくりぬき、カスタードクリームを詰めた桃のタルトも人気だ。
販売するケーキは35種類、焼き菓子は30種類。ホールケーキやマカロンも扱う。「フルーツのカットがすごくきれい」「リーズナブルでおいしい」「子どもと食べる」と訪れた客からはいずれも評判だ。
洋子さんと夫の文夫さんは、ベーカリー大手チェーン店「ドンク」の東京の店で修業。パンとケーキについて学んだ。文夫さんの実家が鹿嶋市にあったことから、故郷で店を開いた。
同市桜町近くで1972年、パンとケーキの店「ポンス」をオープン。80年代に2店舗目としてお菓子とアイスクリームの店「プティ・ドール」を現在地で始めた。その後、「プティ・ドール」チェリオ店の開店に伴い、「ポンス」は撤退した。現在は「プティ・ドール(本店)」1店で営業している。
東日本大震災が発生した2011年には、食事の代わりになるものとしてカステラを500円で販売。粉と卵、電気が使えたことから必死に作り、すぐに完売したという。避難所では無料でプリンを配り、地域のために奔走した。
翌年、文夫さんが亡くなってからも、訪れる客の期待に応えようと店を続けた。ただ、洋子さんの体力やタイミングを考え、閉店に踏み切ることを決めた。
常連客からは閉店を惜しむ声が相次ぐ。同市に実家がある同県水戸市栗崎町の中村可南子さん(24)は「誕生日ケーキを予約したり、子どもの時から通っている。洋菓子店の中で一番おいしいお店なので、悲しいし寂しい」と話した。
閉店が近づく中、洋子さんは「スタッフに恵まれたおかげで、ここまで来られた」と感謝の気持ちがあふれる。「毎日おいしいケーキを作り、きちんとしたものを最後まで提供したい」。洋子さんはほほ笑みながら語った。
「プティ・ドール」は不定休で午前9時半~午後7時。材料の状況で最終日が決まる。