不思議な猫の世界描く 神栖の鈴木さん、創作20年 膨らむ想像、ファン魅了 茨城

茨城県神栖市柳川の鈴木信也さん(83)が20年間以上描き続けているのは、不思議な猫の世界。暗闇に浮かび上がるギョロ目や、えたいの知れない生き物、合体する太陽と月…。そして絵のどこかには必ず、今にも動き出しそうな二足歩行の猫がいる。個展や販売会を定期的に実施しており「猫の絵を描くのは生きがい」と話す。
きっかけは定年退職した約23年前。海岸で貝殻を拾い、ふと思い立ってアクリル絵の具で猫の絵を描いた。いくつかフリーマーケットで出品してみると、思いもよらず好評。「自分の絵を買ってくれる人がいるんだ」とうれしくなった。
それから猫の絵を描くことはライフワークになった。「宇宙のどこかには猫だけの世界があるのではないか。そしてその世界では、太陽と月はくっついているかもしれない」。そんな想像を膨らませ、縦横50センチを超える作品にも次々と挑戦。描くのは猫だけと決めており、「犬ではこの世界観は出せないよ」と言い切る。
絵の構想は朝、目を覚ますと浮かんでくる。まず猫を描き、それから周りの余白を目や太陽、植物などのモチーフで埋める。「自分の中に浮かんだイメージをただ描いていくだけ」。下書きは一切せず、するするとボールペンを走らせる。
これまで、3月上旬には同市波崎のはさき生涯学習センターで個展を開催するなど、県内や千葉県で数多くの展示会や販売会に取り組んできた。愛くるしい表情の猫や不思議な世界観に魅了され、開催のたびに駆け付けるファンも。「描かなくなったら毎日が何もなくなってしまう」と話すほど、大きな生きがいになっている。
続けるうちに上達してきた実感があるといい、「あと10年たったらもっと良い絵が描けるかも」と笑う。今後は見た人をぎょっとさせるような怖い絵にも挑戦してみたいといい、「どうやって描こうか思案中」。鈴木さんと猫の冒険はこれからも続く。