「呼び屋」秘話つづる 宮崎さん(茨城県出身)が自伝 歌手マドンナさんら招聘

海外アーティストを招聘(しょうへい)し、公演を実現させる「呼び屋」-。茨城県出身の音楽・映画プロデューサー、宮崎恭一さん(77)が半世紀にわたる「呼び屋」人生を振り返る自伝を出版した。米歌手、マドンナさんを日本に初めて呼んだ男として知られ、波乱に満ちたビジネスの裏側や有名アーティストとの秘話をつづった。
同県常陸大宮市(旧御前山村)で生まれ、青少年期は同県水戸市で育った。県立水戸一高卒。同市内でレコード店を開業し、フォーク歌手の吉田拓郎さんら大物歌手のコンサートを企画。「呼び屋」のベースが「水戸時代に築かれた」という。上京をきっかけに、30歳代半ばから本格的に「呼び屋」としてのビジネスを開始。その後、数々の実績を重ねて独立、事業を軌道に乗せた。
目を付けた海外アーティストが、まだ日本での知名度はさほどだった米ロックバンドのボン・ジョヴィや英ロック歌手、スティングさんだ。「直感的に売れると感じた」。招聘後に大ブレークした。「自分の目に狂いはなかったことが証明された」と胸を張る。
マドンナさんを初めて日本に呼んだことが「一番の思い出」。絶頂期の日本公演をプロデュースし、成功を収めた。マドンナさん本人から「世界ツアーの夢がかなった」と感謝された時は、「本当にうれしかった」と笑顔を見せる。
本書には「嘘(うそ)のような本当の話」も数多く盛り込んだ。スティングさんがゴルフの後に風邪を引いて公演中止になった出来事、マドンナさんが雨予報で公演中止と判断し行方不明になったこと、クイーンのフレディ・マーキュリーさんに私邸に招かれた経験などを、楽しく文章で描いている。
一方、失敗談も少なくない。急な公演キャンセルで大損害を出したことも。「浮き沈みの激しい人生だった」と振り返る。それでも50年間「呼び屋」として走り続けることができたのは「人脈のおかげ」という。「決して一人ではできない。本当に人に恵まれた」と強調した。
「呼び屋」の魅力について、「自分で企画した公演に多くの人々が集い、熱狂する。それが醍醐味(だいごみ)かな。その光景を見ると、ああ、やってて良かったと思えるんだよね」。優しい目で、こう締めくくった。
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「呼び屋一代 マドンナ・スティングを招聘した男」は講談社+α新書、1100円。