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大西勲さんの人柄しのぶ 一周忌回顧展 漆芸家の人間国宝 希少な作品や道具 10日から茨城・筑西

大西勲さんの回顧展開催へ準備を進める福嶋達也副館長=筑西市大塚
大西勲さんの回顧展開催へ準備を進める福嶋達也副館長=筑西市大塚


2024年5月に79歳で亡くなった茨城県筑西市の漆芸家で重要無形文化財保持者(人間国宝)の大西勲さんの一周忌に合わせた回顧展が、同市大塚の廣澤美術館で開かれる。大西さんの家族が協力し、「生涯職人」を貫いた希少な作品や道具など約60点がそろう。大西さんの長女で漆芸家の未穂さん(47)は「大西勲の人柄が垣間見られるような展覧会になっている」と話している。

大西さんは福岡県中間市出身。2002年、装飾を施さず漆を塗ることだけで仕上げる「髹漆(きゅうしつ)」の人間国宝に認定された。ヒノキの板を薄く削り、直径が異なる円形の「曲輪」を作って組み上げる「曲輪造(まげわづくり)」を用いた。制作ペースは「年に1点、多くて3点」(未穂さん)で、生涯の作品数は100点に満たないという。

回顧展は10日に開幕する。日本伝統工芸展に出品された盛器や足付鉢などの漆器12点に加え、愛用したかんなや竹へら、竹ばさみなどの道具一式、茨城県大子町産にこだわった漆の試し塗りの資料、曲輪の木地や設計図がそろう。少年時代に大西さんが作った精巧な木製飛行機の模型のほか、制作風景などの写真も見どころだ。

大西さんは20代で「鎌倉彫」を学んだ後、髹漆の人間国宝、赤地友哉さんに師事した。それまで木工所で家具を作ったり、自動車工場で塗装作業に従事したりした経験もあり、福嶋達也副館長(38)は「漆芸家になるための無駄な経験が何一つない」と語る。

今回は未穂さんや、大西さんの妻で鎌倉彫を手掛けるかをるさん(78)が展示に協力した。一角には未穂さん、かをるさんの作品も並ぶ予定。未穂さんは「父は個展という形でほとんどやったことがない」と語り、回顧展に期待を寄せる。

福嶋副館長は「丁寧で巧みな技を見ていただければ」と話す。回顧展は6月1日まで。入場無料。廣澤美術館は同展終了後、常設展示室に切り替える予定。

■県内の人間国宝ゼロ

大西勲さんの死去に伴い、茨城県内の人間国宝は1日現在でゼロとなっている。これまで茨城県では大西さんのほか、陶芸家の松井康成さん(1927~2003年)や、一中節三味線の宇治文蝶さん(1935~2021年)が人間国宝に認定された。

文化庁によると、人間国宝は重要無形文化財のうち個人で技を体現する「各個認定保持者」を指す。「芸能」と「工芸技術」の2分野があり、同日現在で全国に105人。一方、24道県でゼロとなっている。



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