高齢者を遠隔見守り 茨城・日立のNPO ネット端末、画面で会話

茨城県日立市に本拠地を置き高齢者支援を手がけるNPO法人が、職員と近隣のお年寄りを遠隔操作のタブレット端末で結び、日々画面を通して会話する見守りサービスを始めた。画面越しに顔が見える「近さ」が利点で、異変を感じた際に家族へ連絡したり、要望に応じて訪問し身の回りの世話をしたりする。1人暮らしや認知症の人の利用などを想定し、家族の負担軽減を図る狙いで、同NPOは高齢者支援の拡充につなげる。
日立市南高野町に事務所を置く「NPO法人ふれあい坂下」(川崎真理子代表理事)が、遠隔操作タブレット端末「ケアびー」を用い、今月からサービスを始めた。市内のベンチャー企業「コンプラス」がシステム構築で連携した。
ケアびーはインターネット機能を搭載済みで、高齢者でも簡単に扱える設計。コンシェルジュと呼ばれる同NPOの職員が待機し、画面越しに応対する。互いの顔が映し出され、部屋の様子も含め異変がないかチェックできる。要望に応じ、買い物や付き添い送迎などの支援も行う。
居間や寝室に置いてもらい、個別に設定した時間に「薬は飲みましたか」「ご飯を食べましたか」といった易しい文面を表示し、利用者が「はい」「いいえ」を選択することで定期的な安否確認が可能。家族やケアマネジャーらのスマートフォンからもつながり、安否が不明の場合は、家族の指示や同NPOの判断で訪問対応する。
サービス提供の背景には、地域の高齢化が急速に進む現状がある。同NPOは2002年に発足。有償運送や配食サービス、子ども食堂の運営など地域の介護支援を担ってきた。事務所のある大規模団地には75歳以上の後期高齢者になる「団塊の世代」が多く、1人暮らしのお年寄りも増加。介護保険で賄えない充実したサービスが求められる一方、見守る家族らの負担も増えている。
市内では早速、1人暮らしの女性(95)が利用を開始した。首都圏に住む家族は「顔が見え、地元でサポートしてくれるので安心」と契約したという。
川崎代表理事は、遠方の家族が頻繁に訪問できない例は多いとし、「地域の中で互いに助け合う有効な仕組み。介護サービスが不足する地域の支援強化にも役立つのでは」と話す。
連携するコンプラスの担当者は「高齢者が簡単に操作できることが重要。技術を活用し、自宅で安心して暮らし続けられる環境づくりになれば」と、期待を寄せている。