脱依存症へ支援食堂 薬物・アルコール 社会復帰の一歩 鹿嶋のNPO開店10年 茨城

薬物、アルコール依存症からの回復を目指す人などが働く食堂が茨城県鹿嶋市鉢形にある。市内のNPO法人が就労支援の場として設けており、開店から10年が経過。ワンコイン(500円)の日替わりランチや安価な弁当を販売し、1日当たり約100人が訪れるなど、徐々に地域へと浸透している。スタッフがやりがいを感じる中、同NPOは社会復帰の一歩になるよう願っている。
「ありがとうございました」。4月22日の昼時、鹿嶋市役所の近くにある食堂「おらげのかまど」で従業員の声が飛び交った。日替わりランチは「チキントマト煮」で、厨房(ちゅうぼう)には「日替わり三つ」などと、絶えず注文が入った。
同食堂は薬物やアルコールといった依存症回復や障害者の支援を行うNPO法人「潮騒ジョブトレーニングセンター」(同市宮中、栗原豊理事長)が2014年11月に開店。現在、センターの利用者13人と職員4人が働く。
勤務2年目で、薬物依存症からの回復を目指す野田明裕さん(52)は「おいしいという言葉を聞くと、喜びを感じる。打ち込むものがあると負の連鎖から遠ざかって生活できる」と、張り合いを感じている。
現場で見守る職員の碓井てる子さん(61)は「最初は『怖い』と不安もあったが、想像していたよりも普通の人たち。(利用者が)できることが増えるとうれしくなる」と支援に励む。
営業は月-金曜の午前11時から午後2時(注文は午後1時半)まで。ワンコインメニューは日替わりのほか、チャーハン、ジャージャー麺を提供する。ご飯大盛り無料でコーヒーか紅茶をサービス。ほとんどのメニューは店内と同価格で、持ち帰り弁当にできる。
色川ミカ店長は「お客さまに、安さや量が喜ばれている」と話す。同センターの作業所「潮騒ファーム」で作ったコメやみそ、野菜類を使っているのが安さの理由。活動の支援者から安く食材を購入できることもあり、地域のつながりにも支えられている。
栗原理事長は「働くことを通して、明るさや自己肯定感を取り戻す姿を見ることが一番の喜び」と同食堂の意義を強調。色川店長は「社会復帰に向かう一歩にしてほしい」と願いを込めた。