教員確保へ養成支援活発化 模擬授業や茨城県教委連携 試験制度見直しも 11日教員選考1次試験

全国的に教員不足が叫ばれる中、茨城県内で11日に公立学校教員選考試験の1次試験が実施される。茨城県では志す人を増やすため、志望の動機づけにつながる取り組みや選考試験制度の見直しが進む。県内の大学では学校の教室を再現した部屋で演習をするなどし、学生のモチベーションを高めるほか、県教育委員会との連携などで教員の若い芽を育てている。
「教員になりたい思いが強まった」-。
4月下旬。茨城大(水戸市文京)の「模擬授業室」で、教員志望者向けの演習が開かれた。学校の黒板や机などを設置し、本物の教室を再現した空間で、学生が教員役と生徒役に分かれて模擬授業を行った。
演習は、教員を目指す気持ちを高めてもらったり、教員選考試験の2次試験で課される模擬授業の対策としても実施されている。
学生らは生徒役と教員役を交代で務め、家庭科では「幼児の生活と家族」、英語では「行ってみたい国」などをテーマに、教員役が授業を展開。授業を終えると、生徒役からは「板書の字を大きくすること」「表情を柔らかくした方がいい」といった助言が出た。
家庭科の教員を目指す同大教育学部4年の立原愛樹さん(21)は「実践的で学ぶことが多い。子どもたちに寄り添える教員になれたら」と目を細めた。
中高生に対するアプローチも広がる。県教委では教員という職業に興味・関心がある中高生を対象に、「教職セミナー」を開催。現役の教員が教職に関する質問に答えたり、参加者同士でのグループワークを通じて職業観などを育む。
教職志望者が学校の児童生徒や現職教員などと交流を図る「教師塾」では昨年度から大学生に加え高校生も参加対象にした。将来の職業として志望してもらえるよう、早期の教員志望の動機づけにつなげている。
県立高の中には、大学教授の講義や模擬授業などを実施する「教員キャリア講座」や、県内大学と連携してオンライン形式のゼミを開くなどの教員養成支援に取り組む学校もある。
茨城県の教員選考試験は本年度実施から1次試験での「教職専門」を廃止し、外部試験(SPI3)による選考枠を新設するなど、より多くの人に受験してもらえるよう改革した。本年度の全体の志願倍率は3.16倍と3年ぶりに上昇した。
一方で、労働環境の改善も課題となる。県教委によると、2024年度の茨城県公立学校教職員の時間外在校等時間は全校種で減少し、一番多い中学校では月平均で23年度比2時間28分減の38時間5分だった。
これに対し、県教職員組合の井坂功一執行委員長は、時間削減は各学校や教職員の自助努力による部分も大きい状況を指摘した上で、「減ったと言ってもこれだけ?というのが教職員の気持ち」と強調。教育行政による削減のためのさらなる施策を求めている。