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《リポート2025》愛称浸透 市収入アップ 茨城・古河の命名権開始5年目 10施設は「買い手」付かず

募集開始から5年目に入ったが、愛称が決まらない三和野球場=古河市東山田
募集開始から5年目に入ったが、愛称が決まらない三和野球場=古河市東山田


茨城県古河市が2020年度にネーミングライツ(命名権)事業を始めてから5年目を迎えた。市の施設に対し、企業が付けた愛称は浸透も進み、命名権を売って得られる市の収入も増えた。一方でいまだに「買い手」が付かない施設もあり、市は改善策を探っている。

▽管理、維持費に
ネーミングライツ事業は市の施設に愛称を付ける権利を企業に与える。権利を得た企業は、会社名や商品名を入れた愛称を冠することができる。市は権利を売って得た収入を施設の管理費や維持費などに充てる。

同市は2021年1月、初めて募集を開始した。スポーツ施設や公園、集会施設、市道といった対象の30施設のうち、これまでに20施設で愛称が決まった。

命名権料は施設によって異なる。20施設の中では「イーエス中央運動公園」(同市下大野)と「イーエスはなもも体育館」(同)の両施設合計で120万円(年額)が最も高額で、市道の「食のおかさと十間通り」や「前田パーキング駅西口駐車場」(同市本町1丁目)などの10万円まで幅広い。

市によると、権利を売って得た収入の合計は21年度が157万9000円、22年度467万2000円、23年度615万円、24年度748万円と年々増えている。市財産活用課は「便利な場所にあり、施設の利用者数や、市の広報誌やメディアへの露出の多い施設は比較的人気が高い」と話す。

▽企業の「恩返し」

名称の適用期間は原則3~5年。契約が更新・延長されるケースもあれば、命名権を持つ企業が変わり愛称が変更された例もある。

今年2月、愛称が「山水はなももプラザ」に変わった同市横山町の地域交流センター(はなももプラザ)。命名権者の山水(同市中央町)は、近所で「ホテル山水」などを運営する。それまでにも施設の利用者に当社のホテルを使ってもらうことがあったという。高橋采子社長は、応募した理由を「当社が払う命名権料が施設の維持管理費に充てられれば恩返しになる。施設は市の広報誌で取り上げられることも多い。命名権料は野立ての看板に広告を出すのと比べても、かえって安いと感じた」と話す。

▽今まで挙手なく

愛称がなかなか決まらない施設もある。三和野球場(同市東山田)や駅西地域交流センター(同市幸町)などの10施設だ。応募が始まっていずれも今まで手を挙げた企業はない。命名権を持つことで得られる明確なメリットを打ち出す必要がある。

同課は「企業にとって魅力に映る価値が新たに加わらない限り、今のような状況が続いてしまう恐れがある」と漏らす。今後、企業の要望を聞き、施設の管理者とも相談しながら、命名権を持つ企業に施設を開放する日を設けるといった権益を検討していくという。



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