斉昭スケッチ初公開 カモや養蜂、つぶさに 水戸市立博物館 学芸員「貴重な研究材料」 茨城

第9代水戸藩主・徳川斉昭が身の回りの気になる事物をスケッチした〝スクラップブック〟など、水戸藩ゆかりの新資料が茨城県水戸市内で見つかり、同市大町の市立博物館で公開されている。江戸屋敷の池のカモや養蜂の様子をつぶさに描き、好奇心旺盛だった斉昭の横顔がうかがえる。25日まで。
藩関連の資料20点と戦国武将の古文書15点が展示され、いずれも国内初公開。2023年に市内の所蔵者が同館に持ち込み、1年間の調査を経て寄託された。
斉昭は青年期-晩年にかけて興味のある事物を本や実物から描写し、全29冊の「諸物会要(しょぶつかいよう)」を編んだ。そこから主要な絵を30点ほど抜粋し、今回展示されている「庶物会要撮要(さつよう)」にまとめた。
藤井達也学芸員は「『ダイジェスト版』の存在が初めて明らかになった。斉昭の観察眼と文化活動の一端をうかがえる貴重な研究材料になる」と強調する。
同藩江戸屋敷の蓮(はす)池で写したカモの絵は、筆色を変えながら羽毛を緻密に描き込み、当時10代と思われる斉昭の観察力が光る。
筒状の巣箱を寝かせた養蜂の図は、単なるスクラップにとどまらない。藩主になり10年ほどたった1840(天保11)年、41歳の時に現水戸市千波町の茶園で養蜂事業を始めた記録が残る。藤井さんは「万物に興味を持った人柄がにじむ。好奇心の強さが政治にも生かされたようだ」と推測する。
また、有名武将の手紙からなる「戦国武将書翰集(しょかんしゅう)」は、いずれも中世文書の本かそれに準ずる写し。織田信長の才気を見抜いた斎藤道三が仲間に売り込む書状など、水面下の外交が分かる貴重な古文書がそろう。
入場無料、午前9時半~午後4時45分。月曜休館。18日午後2時から、藤井さんが展示の見どころを解説する。問い合わせは同館(電)029(226)6521。