《広角レンズ》潮来・あやめまつり 観光広域連携に活路 成田拠点、訪日客を誘致 茨城

1952年に始まった「水郷潮来あやめまつり」。今年は23日から6月22日まで、茨城県潮来市あやめ1丁目の「水郷潮来あやめ園」で開かれる。これまで市の催しとして市内関係者が協力して運営してきたが、今回から近隣自治体などと連携し、イベントの認知度向上や集客底上げを図る。誘客には来園者の満足度を高めることが必須だが、関係者の思いに反し、3~4年前からアヤメやハナショウブの開花が悪いのが現状だ。連携による周遊船運航など、試行錯誤が続く。
「新型コロナの影響で、2024年のあやめまつり来園者数は22万人まで落ち込んだ。インバウンド(訪日客)誘客へ向け、成田国際空港を拠点に新たな挑戦となる」。昨年8月、潮来市の原浩道市長は、近くの千葉県香取市と佐倉市、ホテル日航成田(同県成田市)との4者連携に関する覚書を交わし、こう力を込めた。
成田空港の年間発着枠は現在30万回だが、今秋に34万回、29年には50万回まで増える予定。これに伴い訪日客も大幅に増えるとみられ、4者連携は将来に備えた種まきとされる。
連携ではまつり期間に合わせ、空港を利用する外国人観光客などに同ホテルのレストランが3市の農畜産物を提供する。水郷潮来あやめ園や「水郷佐原あやめパーク」(香取市扇島)など3市の観光施設を巡るスタンプラリーを用意。空港から3市に足を運んでもらうため、「あやめ園からあやめパーク間を結ぶシャトル船を運航する」(原市長)。
■「地元色」脱す
あやめまつりは当初、アヤメやハナショウブを愛する地元住民が切り花をビール瓶などに指して持ち寄った大会だった。その名残もあって、今でも正式名称は「水郷潮来あやめまつり大会」のままだ。
地元色が強い催しから脱したのは40年前の1985年。「つくば万博」関連イベントとして、「嫁入り舟」を運航したのがきっかけだった。県内外に開かれたイベントへの機運が高まり、市もPRに力を入れた。この結果、毎年80万人が訪れる一大イベントに成長した。
ただ、アヤメやハナショウブは連作障害を起こすため、4年ほどで土壌改良が必要になる。水郷佐原あやめパークは昨年、約400種150万株のハナショウブが会場を彩った。佐倉城趾(じょうし)公園内に菖蒲(しょうぶ)園がある佐倉市は2027年の「佐倉城下町 菖蒲まつり」開催に向け、土壌改良と生育改善の最中だ。昨年に続き今年も菖蒲まつりは中止する。潮来市は土壌改良でまつりを中止したことはなく、植え替えなどによって毎年、継続開催している。
■専門家養成へ
「あやめまつりにぜひお越しください」。市観光大使「あやめ娘」の佐藤彩希さんと塙二保さん、原市長らが4月30日、同ホテルを利用する外国人客らにパンフレットを手渡した。まつりの紹介を目にした人から「こんなにきれいなアヤメが咲くのなら行ってみたい」との声が上がり、PRは好感触だった。
原市長は「民間企業を巻き込んだ連携により、ホテルでのPRが実現した。これをきっかけにいろいろ仕掛けていきたい」。訪日客向け多言語対応看板の設置など「3市が互いの良いところを吸収して、政策に生かしていければいい」とし、水郷観光圏の魅力をさらに高めていきたい考えだ。
市民が草刈りなどをしながら長年、守っている水郷潮来あやめ園。市は本年度、生育管理の専門家養成に乗り出した。約500種100万株が咲き誇るまつりの復活を図る。