大の里 集中全う 横綱昇進確実 「支援に感謝」 茨城・つくばで祝賀会



大相撲夏場所で2場所連続4度目の優勝を飾り、場所後の横綱昇進を確実にした大関大の里が所属する二所ノ関部屋(茨城県阿見町)が25日夜、同県つくば市内のホテルで祝賀会を行った。自己最多14勝で自身初の2場所連続優勝を飾った大の里は「長い15日間が終わった。おかげさまで4度目の幕内優勝をすることができた」と多くの支援者に感謝した。
大の里が会場に到着すると割れんばかりの拍手で出迎えられた。今場所は内容でも圧倒的な強さで初日から快進撃を続け、13日目で優勝を決めた。日本中から期待された綱とりを成功させた大の里は「場所中は心の余裕がなく、『いける』と感じなかったことが逆に良かったのかもしれない。一日一番、目の前の相手に集中できたことが結果につながった」と回顧した。
場所前の春巡業では、つくば市を含む県内3カ所を訪れた。同市は飲食店などなじみの店も多い。「たくさんのファンと触れ合えたので、いい結果を見せたい」と誓った中で、最高の結果で期待に応えてみせた。「重圧を深く捉えることはなく、巡業でたくさん『綱とり』『横綱』などと声をかけてくれた。耳が慣れて、全く動じることなく場所に入ることができたことが良かった」と振り返った。
笑顔でまな弟子を出迎えた二所ノ関親方(38)=元横綱稀勢の里、同県牛久市出身=は「やってきたことが実になった」と喜びを語った。場所前の稽古では大の里に胸を貸した。「強さがよく分かった。力を出そうと思っても、太刀打ちできないほど強かった。稽古場はうそをつかないというが、本当に結果に現れた」と実感を込めた。
地元に隣接する阿見町に部屋を構えてもうすぐ丸3年。「横綱から横綱を」を理念に指導に当たってきた。弟子の最高位への昇進は初土俵から所要13場所目で年6場所制となった1958年以降で最も速い記録。初土俵から89場所を要した二所ノ関親方は「自分の苦い経験がたくさんあったからこそ、教えられることも多かった。今場所は心技体が一つになった」と評価した。
これからは横綱として「角界の顔」となる。「まだまだ進化途中。これで終わりではない」と親方は期待を込める。大の里は期待を背に、「相撲を始めたときからの夢に手が届いたことはうれしいし、責任感が出てくる。自覚ある行動を取って頑張りたい」と誓った。
■「おめでとう」祝福の嵐
つくば市吾妻のホテルで25日に開かれた大関大の里の祝賀会では、午後7時半過ぎに大の里が会場に姿を現すと、集まったファンから「おめでとう」との声が飛び交い、祝福の嵐となった。横綱昇進を確実とした24歳に「茨城を盛り上げて」と期待の声が相次いだ。
祝賀会には、偉業を達成した大の里を祝福しようと、二所ノ関部屋の後援会員らが詰めかけた。
「この間までまげを結えないざんばら髪だったのに、もう横綱。本当にすごい」と目を細めるのは阿見町の小山武芳さん(59)。小山さんは二所ノ関部屋開設時からの後援会会員で、町内でカフェを営み、所属力士も食べに来る。この日は「大の里さん 優勝おめでとう」と書かれたシールを貼ったアーモンドチョコレートを祝勝会場に持参。部屋関係者に配り、喜びを分かち合った。
つくば市の須藤里菜さん(31)は「全勝優勝を逃したのが残念だが、横綱になって達成してほしい」とエール。同県桜川市の嶺充夫さん(63)は「大の里の活躍を見て元気をもらえた。今場所の堂々とした姿は印象的だった。偉大な横綱になってほしい」と声を弾ませた。
■「すごい息子だ」 父、観客席で勇姿見届け
最速で横綱への道を切り開いた大関大の里の父・中村知幸さん(49)は25日、家族で東京都墨田区の両国国技館を訪れ、観客席で息子の勇姿を見届けた。支度部屋での万歳三唱にも笑顔で参加した。
知幸さんは14勝1敗で初の綱とりを実らせた息子を「本当にお疲れさま。目指す頂はまだある。全勝優勝できるように進んでいってほしい」とねぎらった。
瞬く間に最高位にたどり着き「2年前に入門し、1年前は優勝。今回また優勝して、頂点に手がかかる人間になったと。すごい息子だと思う」とたたえた。
今場所、両国国技館を訪れたのは初日と中日に続き、3度目。13日目で優勝が決まっていたため「気楽に見れると思っていたが、全勝優勝のプレッシャーが乗っかってきて、気楽じゃなくなった」と苦笑いした。
千秋楽で横綱豊昇龍に敗れ、全勝優勝を逃し「全勝してほしかったが、彼がこれから完璧になるための糧だと思う。横綱に負けたことをずっと忘れず、(これから)勝ってくれるってことを信じたい」と願った。
知幸さんはアマ相撲経験者で、勝負の厳しさをよく知っている。横綱昇進が事実上決まった息子に「(横綱は)勝って当たり前っていう立場。負けない相撲を取らなくちゃいけない。大の里らしく自分の相撲を取りきってほしい」とエールを送った。